遺言を「作るだけで終わり」にせず、確実に実行してもらうための仕組み、それが遺言信託です。
銀行や信託会社が、遺言書の作成サポートから、死後の財産管理・分配までを
一括して担ってくれるため、相続トラブルの予防や事務負担の軽減に大きく役立ちます。
ただ、一方で費用や利用条件には注意が必要です。
この記事では、遺言信託の基本、手続きの流れ、メリット・デメリットについて解説します。
あなたの遺産を誰に、どのように託すのか、安心して対策を進めるためにも、
その判断に必要な知識をここで整理しておきましょう。
遺言信託とは?基本の仕組みを解説
遺言信託とは、単に遺言書を作成するだけの仕組みではありません。
一般的に信託銀行が、遺言書の作成サポートから保管、
そして相続が発生した後の遺言執行までを一括してサポートするサービスです。
遺言書を作ったまま放置してしまうと、内容が実現されないリスクもありますが、
遺言信託を利用すれば、万一の際も遺族が迷うことなく手続きを進められます。
特に、複数の不動産や金融資産を保有している方や、
相続人の関係が複雑な家庭では、その効果が大きく発揮されます。
例えば、相続人が遠方に住んでいて手続きを進めにくい場合でも、
専門機関が公平な立場で関与することで、手続きがスムーズに進み、
トラブルを回避することができます。ここでは、遺言信託の概要について解説します。
遺言信託の定義と3つの特徴
遺言信託とは、信託法に基づき、委託者(遺言者)が遺言によって信託を設定し、
信託銀行などの信託業務を行う金融機関(受託者)に相続財産の管理や処分を委ねる仕組みです。
実務上は、信託銀行が遺言書の作成支援や保管、
相続発生後の遺言内容の実現までを一貫して担うサービス商品として提供されています。
この仕組みには、主に次の3つの特徴があります。
- 高い専門性
信託銀行には相続実務に精通した専門スタッフが配置されており、
複雑な相続関係にも対応できる体制が整っています。
金融機関としての信頼性と、長年蓄積されたノウハウを活かせる点が大きな強みです。 - 長期間の継続性
個人の専門家(弁護士・司法書士等)へ依頼する場合、廃業や病気などによるリスクがあります。
一方、信託銀行は組織として継続的にサービスを提供できるため、
遺言作成から相続発生までの長期間(10年〜20年)でも安定した対応が期待できます。 - 中立的な立場の維持
相続では相続人間で利害が対立することがあります。
信託銀行が信託受託者または遺言執行者として関与することで、特定の相続人に偏らず、
公正かつ円滑に遺言の内容を実現することができます。
家族間トラブルの未然防止にも役立ちます。
なお、信託銀行を遺言執行者に指定する場合もありますが、
「遺言信託」と「遺言執行」とは法的には別の制度です。
信託銀行の役割と提供サービス
信託銀行が遺言信託において果たす役割は、
遺言者の意思形成支援から相続開始後の遺言内容の実現まで多岐にわたります。
1.遺言作成
信託銀行が遺言者の財産構成や家族状況を丁寧にヒアリングし、
法的に有効な遺言書内容の作成をサポートします。
将来のトラブルを防止するため、法令に基づいた助言や実務的な提案
(たとえば特定の不動産を一部の相続人に相続させる際の代償金設定案など)をします。
なお、信託銀行の職員は弁護士資格を有するわけではないため、
遺言内容に関する法的助言が必要な場合は、弁護士等の専門家と連携して対応するのが一般的です。
2.保管
作成した遺言書を信託銀行が厳重に保管します。
保管方法は、貸金庫利用または専用保管サービスを通じて行われ、
改ざん・紛失のリスクを最小限に抑えます。
また、定期的な生存確認などを通じて、遺言が実行される際に迅速に対応できる体制を整えています。
3.遺言執行
信託銀行が遺言執行者に指定されている場合、遺言内容に基づき、
相続財産の調査・評価・名義変更・分配などを適正に実行します。
銀行口座の解約手続きや不動産の名義移転といった煩雑な業務も、
遺言執行者として信託銀行が代行します。
相続税の申告が必要な場合は、信託銀行が提携する税理士を紹介し、
税務手続きが適切に進むようにサポートします。
このように、信託銀行は遺言の作成から執行までを一貫してサポートしますが、
サービス内容や範囲は各行で異なります。
利用を検討する際は、複数の信託銀行に相談し、
費用やサポートの範囲を比較検討することが重要です。
遺言信託が向いている人・向いていない人
遺言信託は、遺言書の作成から保管、
そして相続発生後の手続きまでを信託銀行が担う便利な仕組みですが、
すべての人に最適な方法というわけではありません。
相続財産の内容、家族構成、ここでは、遺言信託が向いている人・向いていない人について、
具体的に解説します。
遺言信託が特におすすめなケース
遺言信託は、相続の内容が複雑な場合や、遺族の手続き負担を軽減したい場合に特に効果的です。
以下のような状況では、専門的サポートが大きな効果を発揮します。
- 相続財産が多額または構成が複雑な場合
複数の不動産や金融資産(株式・債券・預金など)が複数の金融機関に分散している場合、
相続手続きには多くの時間と専門知識が必要です。
特に、上場株式と非上場株式の併存、海外資産の存在などがあるケースでは、
相続人だけで対応するのは困難です。
信託銀行は、これらの多様な資産の管理・処分手続きを専門的に遂行できる体制を有しており、
相続手続きをスムーズに進めるのに役立ちます。 - 相続人間の関係に不安がある場合
相続人の間で意見の対立や感情的な摩擦が生じるおそれがある場合、
信託銀行が受託者または遺言執行者として関与することにより、
手続きを中立的な立場で進められます。
前妻と後妻の子どもがいる場合や、疎遠な兄弟姉妹が含まれる相続などでは、
第三者による執行がトラブル防止に有効です。 - 身寄りが少ない、または相続人が高齢の場合
相続手続きを担う親族が少ない場合や、相続人自身も高齢である場合、
遺言信託を利用することで、信託銀行が遺言内容の執行を確実に行います。
なお、遺言者本人の判断能力が将来低下する可能性に備える場合は、
遺言信託と併せて任意後見契約などの制度も併用を検討すると良いでしょう。 - 事業承継を含む場合
個人事業主や会社経営者が、事業用資産と個人資産を明確に区分して承継させたい場合にも、
遺言信託は有効です。信託銀行は、税理士・司法書士などの専門家と連携し、
事業承継に伴う法務・税務の手続きを円滑に進める体制を整えています。
遺言により遺贈や寄付を選択される場合は、
その受遺者に相続人以外の人や、一般社団法人や協会などの法人も指定することができます。
遺言信託は、多額な財産を有していながら、
相続人がいない場合などの対策として有効な方法と言えます。
不要な人・向いていない人の特徴とその理由
遺言信託は便利な制度ですが、すべての人に適しているわけではありません。費用面や運用目的を考慮し、自分の状況に本当に必要かどうかを判断することが大切です。
- 相続財産が比較的シンプルな場合
自宅不動産と預貯金が中心で、総額が数千万円程度の一般的な規模であれば、
相続人が自力で手続きを行うことも十分可能です。
この規模では、司法書士や税理士に個別に依頼する方が費用を抑えられることが多く、
遺言信託を利用するメリットが相対的に小さくなる場合があります。 - 相続人同士の関係が良好な場合
家族間の話し合いが円滑で、信頼関係が保たれている場合には、
第三者への依頼による費用負担を避け、相続人自らで手続きを進めることも、
現実的な選択肢です。
必要に応じて、専門家の協力を得ながら自主的に対応することをおすすめします。 - 費用負担をできるだけ抑えたい場合
遺言信託では、信託契約の締結費用、保管料、遺言執行報酬などが発生します。
報酬は一般的に相続財産の1〜3%程度が目安といわれており、
財産規模が小さい場合には費用負担が相対的に高くなる場合があります。
費用を抑えたい場合は、公正証書遺言の作成や、
信頼できる相続人を遺言執行者に指定する方法、
または弁護士・司法書士へ個別に依頼する方法も検討に値します。 - 自分で財産を管理し続けたい場合
遺言信託は、相続発生後に効力を生じる制度であり、
生前の財産管理を目的とするものではありません。
生前の財産管理や意思決定を継続的に行いたい方には、
任意後見契約や民事信託(家族信託)など、より柔軟な制度の方が適している場合もあります。
遺言や相続に関する判断は、単純な費用比較だけでは決められない複雑な要素が関係します。
自身の資産構成・家族構成・将来の希望に応じて最適な方法を選ぶためには、
弁護士や司法書士など相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
遺言信託の手続きと流れ
遺言信託は、単なる遺言書作成サービスにとどまりません。
信託銀行が遺言書の保管から相続発生後の執行まで、一貫してサポートする制度です。
手続きは大きく「生前の契約段階」と「相続発生後の執行段階」に分かれ、それぞれ重要です。
相談から契約まで
遺言信託サービスの利用にあたっては、
初回相談から契約締結までおおむね2〜3ヶ月程度を要するのが一般的です。
ただし、財産内容や遺言内容の複雑さにより、期間は前後する場合があります。
- 初回面談・ヒアリング
まずは信託銀行の担当者と面談し、ご自身の財産構成や家族関係、
相続に関連する情報とご意向をいただきます。
担当者は、相続の目的や希望を丁寧に伺いながら、
遺言の作成方法や信託サービスの利用可否について案内します。
「家族に手間をかけさせたくない」「公平に分けたい」といった相談内容が多く、
担当者はこれらを踏まえて、最適なプランを提案します。 - 遺言内容の検討・財産調査
ヒアリングの内容をもとに、具体的な遺言書の内容検討に入ります。
不動産、預貯金、証券、保険金などの財産を整理し、
それぞれの相続先や分配方法を明確にします。
必要に応じて、信託銀行が提携する税理士・司法書士などの専門家と連携し、
法的に有効で実現可能な内容を検討します。 - 公正証書遺言の作成支援
遺言内容が確定した後は、公正証書遺言の作成に進みます。
信託銀行の担当者が公証人との日程調整や必要書類の準備をサポートしますが、
あくまで手続きの支援者であり、遺言者本人が公証人の面前で手続きを行う点は変わりません。
戸籍謄本や印鑑証明書、不動産登記事項証明書など、
必要書類の準備についても丁寧なサポートがあります。 - 契約締結・保管手続き
遺言書作成後、信託銀行との間で遺言信託サービス契約を締結します。
契約時には署名・押印を行い、定められた初期費用を支払います。
遺言書の原本は信託銀行が厳重に保管し、契約者には保管証等が交付されます。
これにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクを最小限に抑えることができます。
相続発生後の執行手続き
相続が開始すると、遺言執行者に指定されている信託銀行が、
ご遺族からの連絡を受けて遺言内容の実現に向けた手続きを開始します。
相続手続きの全体を専門的に管理し、ご遺族の負担を大きく軽減します。
- 遺言書の確認と財産調査
まず、遺言書の存在と内容をすべての相続人に通知し、相続財産の調査・確定を行います。
預貯金の残高確認、不動産登記簿の記録照会、株式や投資信託などの評価額算定を通じて、
遺産の全体像を明らかにします。
相続税の申告が必要な場合は、信託銀行が提携する税理士を紹介し、
申告書の作成や税務手続きをサポートします。
これにより、煩雑な確認作業や申告準備が効率的に進められます。 - 名義変更・相続手続きの実行
遺言内容に基づき、信託銀行が遺言執行者として各種手続きを実施します。
不動産の相続登記(司法書士との連携)、預貯金の解約・名義変更、株式・投資信託の移管など、
必要に応じて関係機関への届け出を代行またはサポートします。
これにより、相続人が各所に個別対応する手間が大幅に軽減され、
遠方在住のご家族でも円滑に手続きを完了できます。 - 財産の分配と完了報告
すべての手続きが完了すると、遺言書の内容に基づいて財産が相続人へ分配されます。
その後、信託銀行から執行結果の報告書が提出され、
すべての財産の処理経過と分配状況を確認することができます。
この報告により、手続きの透明性が確保され、
公正・確実な遺言執行がなされたことが明らかになります。
遺言信託の費用体系
遺言信託の費用は、主に
- 契約時の初期費用
- 契約期間中の年間管理費
- 相続発生時の遺言執行費用
という3つのタイミングで発生します。
この仕組みを理解しておくことで、将来的な総コストを見通しやすくなり、
無理のない判断ができるようになります。
「意外と高い」と感じる方が多いのは、
この3段階の費用をトータルで想像しにくいからかもしれません。
特に年間管理費は契約期間が長くなるほど積みあがるため、
単年だけでなく総額での負担を意識して検討することが重要です。
初期費用・年間管理費・執行費用の内訳
遺言信託の費用体系は以下の通りです。
| 費用項目 | 内容 | 相場 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 遺言書の作成支援、公正証書遺言の作成手続き、相続財産の調査・評価など | 30万円〜100万円程度 |
| 年間管理費 | 遺言書の保管、定期的な意思確認、財産状況変更への対応、税制改正に伴う見直しアドバイスなど | 年額5万円〜10万円程度(契約から相続発生まで毎年発生) |
| 執行費用 | 相続財産の調査・評価、各種相続手続きの代行、財産分割・引き渡しなど。相続財産評価額に応じた定率制が多い。 | 相続財産の1%〜3%程度(最低執行報酬100万円〜200万円を設定する機関も) |
【総費用の例】
例えば、相続財産が3,000万円の場合を考えてみましょう。
初期費用50万円、20年間の保管料40万円(年2万円×20年)、
執行時手数料90万円(3,000万円×3%)で、
総額180万円程度の費用がかかる計算です。
これは、弁護士や司法書士に遺言書作成と執行を依頼する場合と比べ、
2〜3倍高くなることも珍しくありません。
これらの費用に加えて、公証人手数料、不動産の名義変更に必要な登録免許税、
相続税申告の税理士報酬などの実費も別途発生します。
この点も理解しておくことが大切です。
費用を抑えるポイントと注意点
遺言信託を依頼する際は、費用の内訳や契約条件を正確に理解し、
内容に見合ったサービスを選ぶことが重要です。以下のポイントを確認しましょう。
- 複数の信託銀行等を比較検討する
複数の信託銀行や信託会社から見積もりを取り、
サービス内容・費用体系・信頼性を比較検討しましょう。
費用の安さだけで判断せず、担当者の資格・経験、
アフターサポート体制なども含めて総合的に評価することが大切です。 - 年間管理費や割引制度の有無を確認する
一部の信託銀行では、遺言書保管料や年間管理費について、
複数年分の前払いで割引を設けている場合があります。
遺言内容が簡潔で頻繁な更新が不要なケースでは、
管理費が抑えられるプランの選択も検討対象になります。
ただし、割引制度の有無や条件は金融機関ごとに異なるため、事前に必ず確認しましょう。 - 執行費用の算定基準を理解する
遺言執行時の報酬(執行費用)は、相続財産の評価額を基準として算定されるのが一般的です。
不動産を含む場合は、実勢価格か相続税評価額かなど、
どの基準で計算されるかで費用が変動します。
また、海外資産や非上場株式など複雑な財産が含まれる場合は、
追加費用が発生する可能性もあるため、契約前に詳細を確認しておくことが重要です。 - 契約解除時の取扱いを事前に確認する
遺言信託は長期契約になることが多いため、解約条件も慎重に確認しましょう。
多くのケースで、すでに支払った費用の返還が行われないことや、
解約手数料が発生することがあります。
将来的に財産構成や家族関係が変化する可能性も踏まえ、
柔軟に見直せる契約かどうかを検討することが大切です。
遺言信託のメリット・デメリット
「遺言信託は本当に必要?」「費用に見合うだけの価値はある?」と迷う方は少なくありません。
親が高齢になってきたときや、自分の終活を考え始めたとき、
遺言信託は検討すべき選択肢のひとつです。
遺言信託のメリット・デメリットについて、理解しておきましょう。
遺言信託の4つのメリット
遺言信託を活用する主なメリットは、遺言書作成支援だけでなく、
遺言者の死後まで一貫してサポートしてくれる点が大きな特徴です。
- 専門家による一貫サポート
信託銀行や信託会社では、相続・遺言に詳しい専門スタッフが在籍し、
遺言書の作成から保管、相続開始後の執行まで一貫して支援を受けられます。
法的に有効な公正証書での遺言作成とその内容や、遺産分割の方法についても、
それぞれの状況に即したアドバイスが受けられるのが特徴です。 - 確実で迅速な遺言執行
相続が発生した際、信託銀行が遺言執行者となれば、面倒な各種手続きを専門的に代行します。
これにより、相続人の手間や心理的な負担が軽減され、手続きも効率的に進めることができます。 - 遺言書の安全な保管
信託銀行などで遺言書を厳重に保管するため、紛失や改ざんのリスクを防げます。
相続発生時には確実に遺言が執行されるため、自筆遺言のような発見漏れや破棄といった
トラブルの回避にも役立ちます。 - 相続税や財産管理の相談が可能
信託銀行は税理士や他の専門家とも連携し、
相続税対策や財産管理について包括的な助言を受けられます。
ただし、具体的な税務申告や相続税対策の実行については、
外部の税理士が対応するのが一般的です。
費用面・手続き面でのデメリット
遺言信託には利用にあたって注意すべきデメリットがあります。
やはり、特に費用負担が大きく、慎重な判断が必要です。
- 高額な手数料
遺言信託の費用は、遺言書作成時の基本手数料、年間の保管料、
遺言執行時の報酬から構成されます。
例えば、遺産総額が3,000万円の場合、総費用は150万円〜180万円程度になることもあります。
この金額は、弁護士や司法書士に遺言書作成・執行を依頼する場合の
2〜3倍になることもあります。 - サービスの柔軟性に制限がある
信託銀行の遺言信託は標準的なサービスであるため、
複雑な家族関係や特殊な事情を含むケースでは対応が困難なこともあります。
例えば、家族経営の事業承継や障害のあるお子様の生活支援を視野に入れた相続プランなど、
専門法律家の関与が望ましい場合があります。
また、営業時間内のみの対応で、急な相談や夜間・休日の対応が難しいことも考えられます。 - 長期契約と契約解除の制約
遺言信託は通常、遺言者の死亡まで続く長期契約です。
途中解約しても、これまで支払った費用が返還されない場合や
解約手数料がかかる場合があります。
さらに、家族構成や財産状況の大幅な変化による遺言内容の見直しには、
追加費用が生じることが多く、柔軟な変更が難しいこともあります。
遺言信託を検討する際は、費用対効果だけでなく、家族関係や希望する内容を踏まえ、
弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談し、
複数の選択肢を比較検討することをおすすめします。
他の相続対策との違いと選び方
相続対策を検討する際には、遺言書作成や専門家への依頼など、複数の選択肢があります。
それぞれの特徴を理解し、ご自身やご家族に最も適した方法を選ぶことが大切です。
自筆遺言・公正証書遺言との比較
遺言信託と、一般的に知られる遺言書、そして家族信託との違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 遺言信託 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 家族信託 |
|---|---|---|---|---|
| 効力発生時期 | 遺言者の死亡後(生前サポートはあり) | 遺言者の死亡後 | 遺言者の死亡後 | 生前から効力発生(生前・死後の財産管理) |
| 財産管理機能 | なし(ただし、生前相談・見直しは可能) | なし | なし | あり(認知症対策など) |
| 作成の確実性 | 高い(信託銀行がサポート) | 低い(無効リスク) | 非常に高い(公証人が関与) | 高い(専門家が関与、契約書作成) |
| 保管の安全性 | 非常に高い(信託銀行が保管) | 低い(紛失・改ざんリスク) | 非常に高い(公証役場が原本保管) | 高い(受託者が管理、専門家が契約書保管) |
| 執行の確実性 | 非常に高い(信託銀行が執行) | 相続人任せ、トラブルリスク | 相続人任せ、遺言執行者指定で確実性向上 | 高い(受託者が継続的に管理・処分) |
| 検認手続き | 不要(公正証書遺言が基本) | 必要 | 不要 | 不要 |
| 費用 | 高額(初期費用、年間管理費、執行費用) | ほぼ無料 | 数万円〜十数万円 | 高額(数十万円〜数百万円、複雑さに応じる) |
| 変更の容易さ | 手続きと費用が必要 | 容易(自身で作成) | 手続きと費用が必要 | 手続きと費用が必要 |
| 複雑な承継 | 可能(遺言内容による) | 困難 | 困難 | 複数世代にわたる承継が可能 |
| 中立性 | 高い(信託銀行が第三者として執行) | 低い(相続人間で争いリスク) | 遺言執行者指定で中立性向上 | 受託者による(信頼できる家族が受託者) |
どの専門家に相談するべき?
遺言信託や相続対策を進める際、相談する専門家によって進め方や費用に違いが出るため、
適切な専門家を選ぶことが重要です。
- 弁護士への依頼
法律問題や相続争いのリスクがある場合に特に有効です。
遺産分割をはじめ、相続に関する法的リスクの軽減や、遺言書の法的設計、
トラブル発生時の代理対応など幅広く対応できます。
費用は比較的高額で、時間制の相談料や成功報酬制が多い傾向にあります。 - 司法書士への依頼
不動産登記手続きや遺言書作成支援、信託契約書作成に強みがあります。
弁護士に比べ費用は抑えられることが多く、
実務的な登記関係の手続きを中心に依頼したい場合に適しています。 - 税理士への相談
相続税や贈与税の申告・対策に関する専門家です。
高額な財産が関わる場合や節税対策が必要な場合には欠かせない存在で、
税務面の助言や申告手続きを担当します。 - 信託銀行のサービス
遺言信託を包括的に支援できる強みがあります。
ただし、細かな個別事情や複雑な法的問題への対応は、
弁護士や司法書士など他の専門家との連携が重要となることもあります。
実際の専門家選びでは、ご家族の状況、財産内容、予算を総合的に考慮する必要があります。
例えば、不動産中心の相続なら司法書士、相続税が問題になる場合は税理士、
家族間のトラブル懸念があるなら弁護士への相談が適しています。
多くの専門家は初回相談を無料または低額で受付しているため、
複数の専門家に相談し、相性や提案内容を比較検討することをおすすめします。
まとめ
遺言信託は、信託銀行や信託会社が遺言書の作成支援から保管、
そして相続発生後の遺言執行までを一貫して行うサービスです。
単に遺言書を書く以上に、専門機関が責任をもって遺言内容を実行するため、
終活や相続対策として近年注目されています。
遺言信託は、「遺贈」や「寄付」を確実に実現したい方にも適しています。
例えば、特定の公益団体への寄付や、家族以外の方への財産承継を希望する場合、
信託銀行が中立的な立場で手続きを進め、
相続人間でのトラブルを防ぎながら遺言の内容を確実に実現します。
公益的な団体(例:日本証券業協会など)への寄付も、その目的に沿って正確に分配されます。
家族構成が複雑、財産が多額、寄付や遺贈を確実に実行したい場合などでは、
遺言信託はトラブルを予防し、スムーズに手続きを終えるための方法の一つです。
一方でデメリットとして、費用が段階的に発生し総額が高くなる傾向があり、
財産がシンプルな場合は司法書士や弁護士に遺言書作成のみを依頼した方が
費用と効率が良いことがあります。
相続の方法や対策は多岐に渡り、またそれぞれに状況が異なります。
より良い選択をされるためにも、まずはお近くの専門家にお気軽にご相談ください。
ご自身の状況に応じて最適な対策を検討されることをおすすめします。