所長の菅田です。今回は、私が扱った事件について、お話ししたいと思います(勿論、事件内容について書くことはできませんが。)。
最近、身内が突然逮捕されたという方から相談を受けて刑事弁護を依頼され、警察署に勾留されている被疑者に会いに行った(これを「接見」といいます)ところ、被疑者(起訴されると「被告人」と呼び方が変わりますが、起訴前は「被疑者」といいます。)が、被疑事実をやっていないと主張(これを「否認」といいます)する事件を連続で担当しました。
一人は、警察の取調に対しても、否認を貫き、一切供述調書を作成していなかったのですが、もう一人は、何と逮捕初日(!)に、やってもいない事実を認める供述調書を作成していました。
刑事弁護人は、否認している被疑者に対しては、あくまでやっていないものはやっていないと貫くよう助言するのが鉄則なのですが、この方のように、逮捕初日に認める供述調書を作成してしまっていると、助言のしようがなく、その後の弁護活動が、かなり苦しくなってきます。というのも、警察(取調官)は、一旦認める供述調書を作成すると、その後に供述を翻しても、中々新しい供述調書を作成してくれないからです。また、裁判において、本当はやっていないと供述を翻しても、処罰を畏れて、供述を変えたのではないかと疑われがちです。
こうして、やってもいないことを認めた供述調書が、有罪である証拠として一人歩きをしてしまうのです。過去のえん罪事件のほとんどは、このような、やっていない容疑を認めてしまった供述調書(自白調書)の存在が決め手になってしまうことが多いのです。
勿論、その後一貫して否認し続けていれば、向うも根負けして(?)供述調書を作ってくれることもありますし、裁判においては、そもそも、本人の自白だけでは有罪にならない決まりになっています(これを「補強法則」といい、刑事訴訟法に規定があります。)。
しかし、犯行事実を認める供述調書は裁判で重視されますし、認めた供述調書は信用性が高いとして、証拠採用されてしまう可能性が高いのです。
ですから、大切なのは、やってもいない容疑で逮捕・勾留された場合、絶対に認めないことです。取調官は、時には、認めた方が早く出られるなとど誘導して自白するよう進めてきます(これは法解釈により禁じられている行為ですが、現実にはまだまだ存在するというのが率直な感想です。)。認めれば罰金で済むなどと誘導されると、何日も拘束されている被疑者は、つい、1日でも早く家に帰りたい一心で、やってもいない事実を認めてしまうことがあるのです。しかし、上記のように、一度認めたら、それを覆すのは容易ではありません。
ほとんどの方は、自分が逮捕・勾留されるなど、想像もできないかも知れません。よって、この情報はあまり関心がないかも知れませんが、人生は予想もしないことが起こるものです。やってもいない容疑は認めない、この鉄則は、私が刑事弁護をしていて、繰り返し、認めてしまう前に伝えられていればなぁ、と思わされることなのです。
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