これまで、スタッフブログに時折参加してきましたが、独立させた方が良いんじゃない?というある方のアドバイス(いかにも思いつき風。しかも酒の席。。)を真に受けて(笑)、本日から、所長ブログのスタートです。本日は、子供の親権についてです。
離婚に関する相談を受ける際に、特に夫(男性)からの相談の場合、一番やっかいなのが親権についての争いです。
財産分与や慰謝料の問題なら、つまるところお金の問題ですので、お互いの主張を出し合い、同種事案の相場を含めて話合い、協議し、歩み寄りということもあるのですが、子供の親権はいずれか一方という問題(子供を2つに分けることはできませんので。)なので、基本的にはオールオアナッシングということになります。後で書きますが、兄弟不分離という原則もありますので、痛み分けということが観念できないわけです。
皆さんは、夫婦が離婚の際に、子供の親権を争った場合、裁判所はどのような判断をするかご存知でしょうか。
一般の方には意外なようですが、子供の親権を決める場合、裁判所は、離婚の原因がいずれにあるかはほとんど考慮しません。あくまで、子の福祉の観点から、いずれに養育させたほうがこのためになるか、という点から判断します。例えば、母親の不貞行為により離婚に至ったとしても、だから親権者は父親に、ということにはならないのです。
そして、現実の裁判実務では、子の親権を判断する場合、現状維持の原則、母親優先の原則、兄弟不分離の原則、という3つの原則があります。現状維持というのは、基本的に現在の状態で安定しているならそれを動かさないのが子の福祉に合致する妥当という考えです。
そして、一般に、離婚前に夫婦が別居する場合、母親が子供を連れて家をでて(多くは実家に帰り)別居生活が始まりますので、現状維持原則及び母親優先の原則により、ほとんどの場合、母親が勝つという結果になるわけです。
しかし、私が関わった事件で、この原則を当てはめるのは首をかしげる事案がありました。それは、母親が子供を連れて不倫した男のもとに走ってしまい、父親から、離婚および親権を求めて相談を受けたというものでした。父親に言わせれば、勝手に他に男を作って出ていった女にとても子供は任せられないというもので、相手方の不貞行為により婚姻関係が破たんした相談者の心情としては、よく理解できるものでした。しかも、その不倫相手の男性には離婚歴があり、子供(不倫男性の実子)の養育費を出していないというのです。相談者の主張の真偽は定かではありませんが、仮に本当だとしたら、これではそんな男女のもとで自分の子供がきちんと養育されるのか不安なのも理解できます。父親は朴訥で、家には子供の祖父母たちもおり、養育環境も整っています。私は、さすがにこの事案は、裁判所も父親に親権を認めてくれる可能性があるだろうと考え、相談者にもそう話し、かなり頑張って書面も準備しました(別に、普段は手を抜いているわけではないので念のため。)。
しかし、結論として、裁判所は父親に親権を認めませんでした。母親が、これまでのことは反省し、今後はしっかり養育していくと裁判官に述べたからです。
当時、この案件でなぜ母親を勝たせるのか、私には理解できませんでした。
この案件以来、私は、父親から強く親権を求める相談に対しては、要望に応えるのが極めて難しいと説明し、基本的に受任をお断りしています。もちろん、離婚には親権以外にも、財産分与、慰謝料、養育費、面会交流、等争点が複数ありますので、男性からの離婚の依頼を受けないわけではありません。ただ、絶対に親権だけは譲れない、それが離婚の条件だ、という男性の相談者の場合、事件の受任は控えさせてもらっています。正直、私の感覚では、母親が、虐待をしていたか、完全に養育を放棄していたか、そのいずれかがしっかり立証できる場合でない限り、裁判所は父親に親権を認めてくれません。理不尽という思いは捨てきれませんが、これ(例外をほとんど認めない上記3原則)にも、市井の一弁護士にはうかがい知れない、過去の裁判官の英知が宿っているということなのでしょうか。
子と親の関係を含む人間に対する深い洞察力、これが私にはまだまだ足りないのか、悩みながら職務を遂行する毎日です。
以上
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