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相続のために公正証書遺言を作成する費用はいくら?手数料やポイントを解説

2025.10.23
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相続
相続のために公正証書遺言を作成する費用はいくら?手数料やポイントを解説

「公正証書遺言を作りたいけれど、費用がいくらかかるのか分からなくて不安…」
大切なご家族のために遺言書を残したいと思いながらも、
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
作成費用や手続きへの疑問は尽きないことと思います。

この記事では、公正証書遺言を作成する時の費用について解説します。
費用の内訳をしっかり把握しておけば、予算も立てやすくなり、安心して手続きを進められます。
ぜひ参考にしてください。

公正証書遺言の費用相場

公正証書遺言の作成にかかる費用は、
主に「専門家への報酬」と「公証人手数料」に分けられます。
どこに依頼するかで費用は大きく変動しますので、まずは全体の目安を把握しておくことが大切です。

弁護士・司法書士・行政書士の費用比較

遺言書の作成費用は、遺産総額や相続人の人数、内容の複雑さで変わってきます。
一般的には15万円から50万円程度を目安に考えておくと良いでしょう。
この費用には、専門家への報酬、公証人手数料、そして必要書類の取得費用が含まれています。

では、各専門家に依頼した場合の費用相場を見てみましょう。

専門家報酬相場対応範囲メリット注意点
弁護士20万円~50万円遺言作成、相続全般、紛争解決法的トラブルにも対応可能、幅広い知識費用が最も高額
司法書士10万円~25万円遺言作成、不動産登記、相続手続き不動産がある場合に特に有効訴訟代理は制限あり
行政書士5万円~15万円遺言作成、書類作成業務費用が比較的安い、手続きがスムーズ法的紛争には対応不可

弁護士は費用が高めですが、相続人同士の関係が複雑でトラブルが予想される場合や、
事業承継が含まれるなど、高度な法的判断が必要な場面では心強い味方となってくれます。
一方、シンプルな家族構成で大きな争いが予想されないケースでは、
司法書士や行政書士でも十分に遺言作成をサポートしてくれるはずです。

司法書士は、不動産の相続登記もまとめて依頼できるため、
ご自宅や土地をお持ちの方には特におすすめです。
行政書士は費用を抑えながら、確実に公正証書遺言を作成したい方に適しているでしょう。

費用を抑えたいなら行政書士、複雑な相続問題を抱えているなら弁護士というように、
ご自身の状況に合わせて依頼先を選ぶのがポイントです。
ただし、費用だけでなく、経験豊富で信頼できる専門家を選ぶことが何よりも大切です。

公証人手数料の計算方法と財産額別シミュレーション

公証人手数料は、遺産の価額(評価額)に応じて全国一律で定められています。
この手数料は専門家への報酬とは別に、公証役場に直接支払うものです。

公証人手数料の基本的な計算方法

公証人手数料は、遺言によって財産を受け取る「各人」ごとに、その財産の価額を算出し、
それを合計した金額となります。
例えば、配偶者に2000万円、長男に1000万円を相続させるなら、
それぞれに対する手数料を計算し、最後に合算するイメージです。

財産額別の手数料例

  • 100万円以下:5,000円
  • 200万円以下:7,000円
  • 500万円以下:11,000円
  • 1000万円以下:17,000円
  • 3000万円以下:23,000円
  • 5000万円以下:29,000円
  • 1億円以下:43,000円

具体的なシミュレーション例

総財産3000万円を配偶者に2000万円、子どもに1000万円相続させる場合

  • 配偶者分(2000万円):23,000円
  • 子ども分(1000万円):17,000円
  • 合計:40,000円

この他、遺言書の枚数が4枚を超える場合は1枚につき250円、
正本・謄本の交付手数料として1枚250円が加算されることがあります。
もし遺言者ご本人が高齢や病気で公証役場に行けない場合、
公証人に自宅などへ出張してもらうことも可能です。
その際には、基本手数料の1.5倍に加え、公証人の日当と交通費が必要となるでしょう。

証人費用・出張費用・必要書類代の詳細

公正証書遺言の作成時には、公証人手数料や専門家への報酬の他に、
いくつかの付随費用が発生します。これらの費用は見落としがちですが、
事前に把握しておけば予算オーバーを防げるはずです。

証人費用について

公正証書遺言の作成には、法律で定められた2人の証人が必要です。
証人1人あたり5,000円から10,000円程度の費用がかかるのが一般的です。
大切な親族は証人になれませんので、専門家へ依頼する際は、
事務所のスタッフや提携の専門家に証人を依頼することが多いです。
専門家の報酬に証人費用が含まれているケースもありますから、依頼時に確認しておきましょう。

出張費用の詳細

遺言者ご本人が病気や高齢で公証役場まで行けない場合、
公証人に自宅や病院などへ出張してもらうことも可能です。
この出張費用は、通常の公証人手数料の1.5倍に加え、
公証人の日当が20,000円、証人の日当が1人あたり10,000円、そして交通費(実費)が必要です。
例えば、通常の手数料が40,000円だったとしても、
出張では総額10万円を超えるケースも少なくありません。

必要書類の取得費用

公正証書遺言の作成には、戸籍謄本、印鑑証明書、固定資産評価証明書といった
さまざまな書類が欠かせません。これらの取得費用は、合計で3,000円から10,000円程度
目安でしょう。戸籍謄本は1通450円、印鑑証明書は1通300円、
固定資産評価証明書も1通300円程度かかります。
もし不動産を多くお持ちの場合や、相続人の人数が多い場合は、
必要書類が増えるため費用も高くなる傾向があります。

これらの費用を含めると、公正証書遺言の作成には、想像以上に費用がかかることもあります。
しかし、遺言書がないために生じる相続トラブルの解決には、
遺言作成費用の何倍もの費用と時間がかかるものです。
ご自身の状況に合わせた最適な方法や正確な費用見積もりを知るためにも、
まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

専門家の選び方と弁護士に依頼すべきケース

遺言書の作成や相続手続きには、複数の専門家が関わります。
それぞれ業務範囲や得意分野が異なるため、
ご自身の状況に合った専門家を選ぶことが何よりも大切です。
もし専門家選びを間違えてしまうと、せっかく費用をかけたのに期待通りの結果にならなかったり、
後で家族間のトラブルに発展したりするかもしれません。

遺言書作成や相続に関わる専門家は、決して弁護士だけではありません。
司法書士、行政書士、税理士など、それぞれ異なる専門性を持っています。
案件の性質や複雑さによって最適な選択肢が変わることを、まず理解しておきましょう。

各専門家の業務範囲と得意分野の違い

相続や遺言書に関わる主な専門家は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士です。

弁護士は、相続に関するあらゆる法的問題に対応できる、最も幅広い権限を持つ専門家です。
遺言書作成はもちろん、相続人同士の紛争解決、遺産分割協議の代理、
家庭裁判所での調停・審判手続き、そして訴訟まで一貫して任せることができます。
特に、相続人同士の対立が予想される場合や、すでにトラブルが起きている場合には、
弁護士の力が不可欠です。
複雑な法的判断が必要な遺言内容や、事業承継を含む高額な相続案件でも、
その専門性が大きな助けとなります。

司法書士は、不動産登記手続きの専門家として、
相続における不動産の名義変更で重要な役割を担います。
家庭裁判所への書類作成代行も可能で、遺言執行者への就任や相続放棄の手続き支援なども行います。
ただし、相続人同士で争いがある場合の代理交渉はできませんので、注意が必要です。
比較的シンプルな相続案件で、
主に手続き面でのサポートを求める場合に適していると言えるでしょう。

行政書士は、遺言書作成の支援や相続手続きに必要な書類作成を得意としています。
戸籍謄本の収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成などを手掛けるのが主な業務です。
しかし、登記手続きや裁判所での代理はできませんので、
不動産を含む相続では他の専門家との連携が必要になる場合が多いでしょう。

税理士は、相続税の申告や節税対策の専門家です。
遺言書作成の段階から税務の観点でアドバイスを行い、
相続税の負担をできるだけ抑える方法を提案してくれます。
特に、相続財産が基礎控除額を超えそうな場合や、事業用の資産を多くお持ちの場合には、
税理士のサポートが非常に重要となります。

複雑な相続案件で弁護士が必要になるケース

相続案件の中には、他の専門家では対応が難しい、
弁護士の専門性が不可欠となるケースも存在します。
こうした状況を事前に見極めておけば、最初から適切な専門家に相談でき、
時間や費用を無駄にせずに済みます。

相続人同士の対立が予想される、またはすでに発生している場合

  • 前妻との子どもと現在の家族の間で遺産分割の意見が食い違う
  • 特定の相続人が遺産の大部分を相続することに、他の相続人が納得していない
  • 遺言書の有効性に疑問を持つ相続人がいる

このようなケースでは、法的な代理権を持たない専門家では根本的な解決が難しいでしょう。
弁護士に相談し、法的トラブルを避けることが肝心です。

事業承継を伴う相続案件

会社経営者の方が後継者へ事業を継がせる場合、
株式の承継方法、事業用資産の扱い、従業員の雇用継続、取引先との関係維持など、
多角的な法的検討が必要です。
事業承継税制の活用や持株会社の設立なども視野に入れた、総合的な対策が求められる場面です。

遺言書の内容が複雑で、法的な有効性に不安がある場合

  • 遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を侵害する可能性のある内容
  • 条件付きの遺贈(「〇〇をしたら△△を遺す」といった指定)
  • 信託を活用した相続対策

こうした複雑な遺言は、専門知識なしには作成が難しいものです。
せっかく作成した遺言書が無効になったり、
後々の紛争の原因となったりするリスクを避けるためにも、
最初から弁護士に相談することをおすすめします。

相続財産が高額で、相続税対策と法的対策を両立させたい場合

高額な相続財産がある場合、税理士との連携も重要ですが、
法的な枠組みの設計や実行には弁護士の専門性が不可欠となるでしょう。

信頼できる専門家を見極める具体的ポイント

専門家選びで失敗しないためには、資格や経験はもちろん、
コミュニケーション能力や人柄も大切な判断基準になります。
遺言書や相続は非常に個人的な内容を扱うものですから、
心から信頼できる専門家を見つけることが成功への鍵となるでしょう。

初回相談での対応

  • 話をじっくり聞いてくれるか
  • 専門用語を分かりやすく説明してくれるか
  • 質問に対して的確に答えてくれるか
  • 一方的に高額なサービスを勧めず、状況に応じた選択肢を提示してくれるか

初回相談は、専門家の質を見極める大切な機会です。これらの点を注意深く観察してみてください。

料金体系の透明性

信頼できる専門家は、料金について最初から明確に説明し、
追加費用の可能性も事前に教えてくれるものです。
「相談料無料」を謳いながら、高額な契約を勧める専門家には注意しましょう。
適正な対価で良質なサービスを提供している専門家を選ぶことが、満足のいく結果につながります。

実績と専門性

相続の案件をどのくらい扱っているか、類似ケースでの解決実績があるかなど、
具体的に尋ねてみましょう。
定期的な研修受講や最新の法改正への対応状況も、専門家としての資質を判断する材料になります。

アフターフォロー体制

遺言書作成後の保管方法、法改正があった場合の対応、実際の相続発生時のサポート体制など、
長期的な視点でのサポートができるかどうかも確認しておきたい点です。

また、複数の専門家に相談し、比較検討することもおすすめします。
それぞれの提案内容や人柄を比べることで、ご自身に最も適した専門家を見つけられるでしょう。

公正証書遺言でも無効になるケースとは?

公正証書遺言といえども、内容によっては法的に無効になったり、
相続人同士で激しい争いになったりするケースは珍しくありません。
特に、家族構成が複雑な場合や、相続財産に不動産が含まれる場合、
事業承継を伴う場合などでは、表面的な費用だけでなく、
専門的な観点から総合的に検討することが不可欠となります。

そのため、単に「公正証書だから大丈夫」と安易に考えるのは少し危険かもしれません。

法的に無効になりやすい遺言書の特徴

公正証書遺言であっても、内容が法的要件を満たしていなければ無効になってしまうことがあります。
最も多いのは、遺言者ご本人の「意思能力」に疑いがある状態で作成されたケースです。
例えば、認知症の進行により判断能力が低下していた場合、
後になって相続人が「遺言作成時には意思能力がなかった」と主張し、無効を訴えるかもしれません。
公証人は一定の確認を行いますが、医学的な判断までは難しいため、
微妙なケースでは見落とされる可能性も考えられます。

また、遺言の内容が曖昧で、解釈の幅が広すぎる場合も問題になりやすいポイントです。
「長男に家を相続させる」といった記述では、どの家を指すのか、
土地も含まれるのかといった点で、相続人同士の争いが生じるかもしれません。
不動産については、登記簿上の正確な地番・家屋番号まで記載することが求められます。
この記載が不十分だと、せっかくの遺言の執行ができない可能性もありますので注意が必要です。

弁護士が見つける、よくある記載ミス

  • 財産の特定不足:
    「自宅を長男に」とあっても、正確な住所や地番がなければどの家か不明確です。
    銀行預金も、金融機関名、支店名、口座番号まで明記しないと手続きで困ることがあります。
    不動産は登記簿謄本通りに、預貯金は通帳の記載通りに詳細を書きましょう。
  • 遺留分への配慮不足
    配偶者や子どもには、法律で保障された最低限の相続分(遺留分)があります。
    これを完全に無視した遺言内容だと、後々「遺留分侵害額請求
    (法律で保障された最低限の取り分をめぐる、後々の金銭トラブル)」という形で
    争いの火種になりかねません。
  • 予備的遺言条項の欠如
    もし財産を譲る相手(受遺者)が遺言者より先に亡くなった場合、
    その財産がどうなるかを明記しないと、思わぬ相続関係が生じる可能性があります。
    「もし長男が先に亡くなったら、長男の配偶者に」といった指定をしておくと安心です。
  • 付言事項の記載方法
    遺言者の想いや家族へのメッセージを記載する「付言事項」は法的効力はありませんが、
    相続人の理解を深める大切な役割があります。
    ただし、ここで他の相続人への批判的な内容を書いてしまうと、
    かえって感情的な対立を生む原因となるかもしれません。

証人選定にも注意が必要

公正証書遺言の作成には、法律で2名の証人の立会いが義務付けられています。
この証人には厳格な要件があり、適切でない方を証人にしてしまうと、
遺言自体が無効になるリスクもありますので、十分な注意が必要です。

  • 証人になれない人
    未成年者、推定相続人(将来相続人となる可能性のある人)、
    受遺者(遺言で財産を受け取る人)、そしてこれらの人の配偶者や直系血族は証人になれません。
    公証人の親族や職員も同様です。
    証人には遺言内容を第三者に漏らさない「守秘義務」があります。
    信頼できる人物であり、かつ利害関係のない人物を選ぶことが大切です。
    もし自分で証人を見つけるのが難しい場合は、公証役場で紹介してもらうこともできますし、
    専門家に依頼すれば手配してくれるでしょう。

さらに、遺言者ご本人の真意と異なる内容が記載されてしまうケースも散見されます。
公証人との打ち合わせで、ご自身の意図を正確に伝えられなかったり、
ご家族の誰かが代理で説明した内容が本当の意思と異なっていたりする場合などです。
このような場合も、後から「遺言書の内容は本意ではない」として争われることになるでしょう。

遺留分侵害で後々高額になるケース

公正証書遺言を作成する際、見落とされがちなのが「遺留分(いりゅうぶん)」の問題です。
遺留分とは、配偶者・子・親といった一定の相続人に対し、
法律で保障されている最低限の相続分のことです。
遺言でも、この権利を完全に奪うことはできないのです。

例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言を作成すると、
配偶者や他の子どもたちは「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
この請求が認められれば、長男は他の相続人に対して、
遺留分に相当する金銭を支払わなければなりません。
もし遺産が不動産中心で現金が少ない場合は、
この支払いのために不動産を売却せざるを得ない状況に陥る可能性もあります。

特に深刻なのは、遺留分侵害額請求の金額が、当初想定していた以上に高額になるケースです。
遺留分の計算には、相続開始前の一定期間内に行われた贈与も含まれます。
そのため、生前に特定の相続人へ多額の贈与をしていた場合、
その分も考慮されて遺留分が計算されることになります。
また、不動産の評価額が遺言作成時から大幅に上昇していた場合も、
予想を超える高額請求につながることがあるので注意しましょう。

さらに、遺留分侵害額請求には利息も発生しますから、請求から支払いまで時間がかかると、
その負担はさらに重くなります。当初数百万円だった請求が、
最終的には1000万円を超えるような額になってしまうケースも実際に起きています。
こうした事態を防ぐには、遺言書作成時に遺留分を適切に計算し、
バランスの取れた内容にしておくことが非常に重要なポイントです。

弁護士のチェックで防げるトラブルの事例

専門的である弁護士のチェックを受けておけば、防げるトラブルは数多くあります。
例えば、先ほどお話しした遺留分(法律で保障された最低限の取り分)の問題についても、
弁護士であれば事前に正確な計算を行い、
将来の争いを最小限に抑える内容を提案してくれるはずです。
たとえ遺留分を侵害する内容であっても、「遺留分の放棄」手続きを併用したり、
生命保険を活用して遺留分に相当する資金を準備したりといった対策も可能です。

また、相続税の観点からのアドバイスも重要です。
遺言の内容次第では、本来受けられるはずの配偶者控除や小規模宅地等の特例が使えなくなり、
結果的に相続税が大幅に増えてしまうこともあります。
弁護士が税理士と連携してチェックを行うことで、税務面を考慮した上で作成することが可能です。

事業承継が絡むケースでは、弁護士の関与がさらに重要になります。
単純に株式を後継者に集中させるだけでは、他の相続人から不満が出たり、
事業承継税制の適用要件を満たせなかったりする可能性も考えられます。
弁護士であれば、事業承継全体の設計を考慮した上で、遺言書の内容を最適化してくれるはずです。

ご家族の事情に応じたきめ細かい配慮も、弁護士ならではの強みです。
例えば、相続人の中に借金を抱えている方がいる場合、その方に直接財産を相続させると、
債権者に差し押さえられてしまうリスクがあります。
このような状況では、信託を活用したり、相続の順序を工夫したりすることで、
ご家族の生活を守ることを考慮します。このような、表面的には見えないリスクを事前に発見し、
ご家族の安心のためにも、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

遺言執行時の費用と相続のトラブルの対応について

遺言書を作成したからといって、すべてが安心というわけではありません。
実際に相続が発生した際の執行費用や、万一トラブルが起きた場合の対応費用についても、
事前に把握しておくことが大切です。

遺言執行者報酬の相場と法的な根拠

遺言執行者の報酬は、
相続財産の管理や遺言内容の実現という重要な役割に対する対価として支払われるものです。
この報酬について、「どのくらいかかるのか」「誰が金額を決めるのか」といった
疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

法的な根拠としては、
民法第1018条に「遺言執行者は、相続財産の状況その他の事情によって
相当な報酬を受けることができる」と定められています。
遺言書で報酬額を指定することもできますし、
相続人全員の合意があれば報酬額を決めることもできます。
もし合意が得られない場合は、家庭裁判所が報酬額を決定することになるでしょう。

実際の相場を見てみると、一般的には相続財産の1〜3%程度が目安とされています。
例えば、相続財産が3000万円の場合、30万円から90万円程度の報酬が発生する計算です。
ただし、この割合は相続財産の規模によって変動し、
財産が多額になるほど割合は下がる傾向があります。
具体的には、1000万円以下の部分には3%、1000万円超5000万円以下の部分には2%、
5000万円を超える部分には1%といった段階的な計算方式が採用されることが多いようです。

また、遺言執行者がご親族の場合と、弁護士や司法書士といった専門家の場合では、
報酬の考え方が異なります。ご親族が執行者となる場合は無報酬であることも珍しくありませんが、
専門家の場合は先ほどご説明した相場に基づいた報酬が発生するのが一般的です。
さらに、遺言内容が複雑で執行に時間がかかる場合や、
相続人同士でトラブルが発生している場合には、追加の報酬が認められることもあるでしょう。

相続のトラブルが発生した時の弁護士費用

弁護士の費用は案件の複雑さや争点の内容によって大きく異なります。
平穏な相続を願っていても、実際には遺産分割協議がまとまらなかったり、
遺言の有効性について争いが起きたりするケースは少なくありません。

弁護士費用の体系を理解しておけば、いざというときの備えになるでしょう。
まず相談料ですが、初回30分から1時間程度で5,000円から1万円程度が相場です。
ただし、初回相談を無料で行っている法律事務所も多くあります。
着手金については、遺産分割調停の場合で20万円から50万円程度、
遺言無効確認訴訟では30万円から80万円程度が一般的な水準と言えます。

成功報酬は、最終的に獲得できた経済的利益に対して、一定の割合で計算されます。
具体的には、300万円以下の部分に16%、300万円超3000万円以下の部分に10%、
3000万円を超える部分に6%といった段階的な料率が適用されることが多いでしょう。
例えば、1000万円の遺産について争いが生じ、
最終的に500万円を獲得できた場合、成功報酬は約42万円となる計算になります。

さらに、調停や訴訟が長期化すれば、その分費用も膨らむでしょう。
遺産分割調停は平均して1年から1年半程度の期間を要しますし、
訴訟となればさらに長期化する可能性もあります。
この間の弁護士との打ち合わせ、書類作成、裁判所への出廷などに伴う費用も発生します。
また、不動産鑑定や税理士による相続税申告が必要な場合は、
それらの専門家費用も別途かかることになります。

事前に弁護士が関与する費用対効果

相続トラブルが発生してから弁護士に依頼するよりも、
遺言書作成の段階から専門家に関与してもらう方が、
長期的に見れば費用対効果が高いケースが少なくありません。
この「予防的なアプローチ」について、具体的なメリットと費用を見ていきましょう。

遺言書作成時に弁護士に依頼する場合の費用は、一般的に10万円から30万円程度です。
公正証書遺言の作成を含めても、50万円以内で収まることがほとんどでしょう。
一方、相続トラブルが発生してから解決まで至ると、
先ほどお話ししたように数十万円から数百万円もの費用が発生する可能性も出てきます。
さらに、トラブル解決まで1年以上の時間を要することも珍しくありません。
その間の精神的な負担や、相続人同士の関係悪化といった
「見えないコスト」も考慮する必要があるでしょう。

事前に弁護士が関与することで得られる具体的なメリットを挙げてみましょう。
まず、法的に有効で実現可能な遺言書を作成できる点です。
自筆証書遺言では、形式的な不備で無効となるリスクがありますし、
内容も「実際に執行できるか」という観点での検証が不十分になりがちです。
弁護士が関わることで、こうしたリスクを最小限に抑えられます。

また、相続人の遺留分(法律で保障された最低限の取り分)に配慮した内容にすることで、
将来的な遺留分侵害請求(後々の金銭トラブル)を防ぐことも可能です。
遺留分を完全に無視した遺言書を作成してしまうと、
相続開始後に紛争が生じる可能性が高まってしまいます。
事前に各相続人の遺留分を計算し、それを考慮した遺産分割を提案してもらうことで、
争いの芽を摘むことが可能となります。

さらに、弁護士を遺言執行者に指定しておけば、
相続開始後の手続きがスムーズに進むというメリットもあります。
不動産の名義変更や銀行口座の解約など、
相続手続きには専門知識が必要な作業が数多く含まれますからです。
一般の方が執行者となった場合、これらの手続きに時間がかかったり、
間違いが生じたりするリスクも考えられます。

このように考えてみると、
遺言書作成時の弁護士費用は「保険料」のような性格を持っていると言えるでしょう。
将来発生するかもしれない大きな損失を、比較的少ない費用で回避できる可能性が高いからです。
特に、相続財産がある程度の規模に上る場合や、相続人同士の関係が複雑な場合には、
事前の専門家関与による効果はより顕著に現れるはずです。

まとめ

遺言書作成は、ご自身の想いを大切なご家族に確実に伝え、
相続のトラブルを未然に防ぐための重要な手続きです。
しかし、形式的な不備や内容の曖昧さがあると、せっかくの遺言が無効になったり、
かえってご家族間の争いを招いてしまったりするリスクも存在します。

特に、自筆証書遺言では全文を手書きする必要があり、
日付の記載方法や訂正の仕方にも厳格なルールがあります。
また、遺留分(法律で保障された最低限の取り分)への配慮や相続税対策も含めて
総合的に検討する必要があるため、
法律の専門知識がない方が一人で進めるには限界があるのが現実です。

一方で、公正証書遺言であれば公証人が関与するため、形式的な不備はほぼ避けられます。
ですが、事前の準備や内容を検討する段階では、
やはり相続に詳しい専門家のアドバイスが欠かせないものです。
遺言執行者の選定や、複雑な相続関係がある場合の記載方法は、
実務経験豊富な専門家だからこそ適切に判断できる領域と言えます。

専門家への相談は、単に遺言書を作成するだけでなく、
家族の今後に配慮した上でご自身の想いを確実に遺すために、大切なものです。
経験豊富な専門家のサポートを受けることで、
法的な有効性を保ちながら、ご家族の将来に安心をもたらす遺言書を作成していきましょう。

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