Xは保険会社Yとの間で、自身が所有する建物について火災保険契約を締結した。その3年後、建物が全焼したため、XはYに対し、火災保険金を請求した。
消防は、火災の原因を、Xが寝たばこで布団を焦がしたため、それを建物裏手に置いたところ、布団が再燃して洋室外壁部分から燃え広がったものと判定した。
原審は、別の出火場所が存在し、そこにXが灯油を撒いたこと等を認定し、Xの故意による放火と判断した。
Xは控訴した。
本件火災は、本件洋室外壁から出火して本件建物を焼損したものであるが、本件火災当時、通常は灯油が使用されない場所である本件洋室内に相当量の灯油が散布されており、これが助燃剤となって床面から炎が立ち上り燃焼を生じて本件建物を全焼するに至ったものと認められ、この相当量の灯油はXが散布したものと推認するほかないことからすると、本件火災はXの故意により生じたものと認めるのが相当である。
火災保険金の請求に保険会社が応じない場合、保険契約者から訴訟が提起されることがありますが、この場合、保険契約者と保険会社のいずれが立証責任を負うのかとうい問題があります。この点、平成13年に最高裁の判決が出され、傷害保険に関しては、故意過失がないことを保険金契約者が立証する必要があるとの判断がしめされました。
しかし、請求者に立証責任を科すことは、具体的事案において妥当でない場合も多く、学説では保険会社に立証責任を科すべきだとの見解も有力でした。
最高裁は、平成16年に新たな判断をだし、火災保険では、火災が故意・過失により起こされたものだとした場合、保険会社がその故意・過失についての立証責任を負うとしました(最高裁平成16年12月13日判決)。傷害保険と火災保険とで立証責任を別にする判断をしたのです。このようは区別が妥当かについても意見が分かれていますが、その後、保険法が改正となり、現在では、傷害保険についても保険会社が立証責任を負うとされています。
では、立証責任を負う方は、どのようにして故意・過失を立証していくのでしょうか。故意・過失は行為者の内心の問題であるため、その認定は容易ではなく、様々な間接事実の積み上げとなります。本件でも、本件火災(6月)の1週間前に37リットルもの灯油を購入していること、本件火災時は灯油が相当減っていたこと、灯油が漏れ出した形跡はないこと等から、Xが灯油を散布したと推認し、また、Xが金銭的に困窮していたこと等も併せて、Xの故意を認定しています。
その事実認定の過程は、放火の故意の立証にあたって参考になります。
当事務所では、相談するにあたり紹介者は必要ありません。
どなたでもお気軽にご相談いただく事ができます。
お急ぎの方は、その日の相談 「即日相談制度」 を受け付けております。