本件は、原告らの子であるAが、被告学園の経営する私立中学校の1年在学時に自室で首つり自殺をしたことにつき、被告学園が在学生らに対して、Aの自殺を知らせ、自殺の原因等につき調査し原告らへ調査する義務があったのに、それを怠ったとして、在学契約上の債務不履行責任を追及した事案である。
学校法人の経営主体は、在学契約に基づき、保護者に対し、預かった生徒の学校生活上の安全に配慮して、無事に学校生活を送ることができるように教育・指導をすべき立場にあるのであるから、信義則上、在学契約に付随して、生徒が自殺し、それが学校生活上の問題に起因する疑いがある場合には、その原因が学校内のいじめや嫌がらせであるか否かを解明するために、他の生徒の健全な成長やプライバシーに配慮したうえ、必要かつ相当な範囲で、適時に事実関係の調査をして、保護者に対しその結果を報告する義務を負うというべきである。
本件は、私立中学校のゴルフ部に所属していた中学1年生のAが自殺し、その後、Aの自殺はいじめが原因であることを示唆するような事実が次々に明るみになったことから、Aの両親が、学校に調査を求めたにもかかわらず、学校が行った調査が表面的なものにとどまったことから、Aの両親が学校に対して損害賠償請求をし、一部が認容された事案である。
本判決は、在学中の生徒が自殺した場合に、その原因となる事実の調査を行うことが当事者間において明文で契約内容となっていなくても、信義則上、学校にはそのような義務があることを認めた点で画期的である。認容された金額は80万円であるが、金額については評価が分かれよう。請求金額の3分の1ほどになってはいるが、調査を怠ったという信義則上の義務違反で80万円を認容されたのは、それなりの金額という評価もできると思われる。
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