被告人は、無差別殺人を企て、営業中のパチンコ店の店内にガソリンを撒いて火を放ち、5名を死亡させ、10名に傷害を負わせた。
弁護人は、被告人の責任能力を争うと共に、絞首刑は頭部を離断させるおそれがあるため、憲法36条に反する残虐な刑罰に当たると主張した。
死刑の執行方法が、憲法36条で禁止する「残虐な刑罰」に当たるのは、考え得る執行方法の中でも、それが特にむごたらしい場合ということになる。特にむごたらしいか否かといった評価は、歴史や宗教的背景、価値観の相違などによって、国や民族によっても異なり得るし、人によっても異なり得るものである。死刑の執行方法が残虐と評価されるのは、それが非人間的・非人道的で、通常の人間的感情を有する者に衝撃を与える場合に限られるものというべきである。
死刑に処せられる者は、それに値する罪を犯した者である。執行に伴う多少の精神的・肉体的苦痛は当然甘受すべきである。また、他の執行方法を採用したとしても、予想しえない事態は生じ得るものである。確かに、絞首刑には、前近代的なところがあり、死亡するまでの経過において予測不可能な点がある。しかし、だからといって、既にみたところからすれば、残虐な刑罰に当たるとはいえず、憲法36条に反するものではない。
頭部離断は、例外的に事故として生じるに過ぎない。
憲法36条により残虐な刑罰は禁止されていますが、最高裁(昭和30年4月6日判決)では、「現在各国において採用している死刑執行方法は、絞殺、斬殺、銃殺、電気殺、瓦斯殺等であるが、これらの比較考量において一長一短の批判があるけれども、現在わが国の採用している絞首方法が他の方法に比して特に人道上残虐であるとする理由は認められない。従って絞首刑は憲法三六条に違反するとの論旨は理由がない。」と判断されています。
もっとも、残虐性の評価は、その時代や環境において変化すると考えられるため、その後もしばしば争われることがあります。
本判決は、裁判員裁判のもとで、はじめて死刑の執行方法が争われたという点で意義があります。
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