Aは、昭和55年4月25日付けで、全財産を妻Bに相続させる旨の自筆証書遺言(旧遺言書)を作成したが、その後、Bが存命中の平成19年3月2日に、全財産を実妹Cに相続させる旨の公正証書遺言(本件遺言書)を作成した。
その後、Aは平成19年8月27日に死亡し、Cが、Aの法定相続人らに、本件遺言が有効であることの確認を求めた事案
本件遺言書作成当時、Aはうつ病及び認知症に罹患しており、幻視幻聴等の問題行動があり、また、情動不安定等のために種々の薬剤が処方されていた状態等からすれば、Aは判断能力が減弱した状態にあり、意思能力を備えていたと認めることは困難である。
また、Cは、Aに無断でAの住所をCの住所に変更し、印鑑登録まで行い、Aが新たに遺言をしたいとの話を聞いていないのに、Cが本件遺言書の作成手続を行っているうえ、作成手続自体にも不十分な点が複数存在した。
さらに、Aは旧遺言書を作成しているが、Bが生存中であるにも関わらず、全財産をCに相続させる旨の遺言を作成する合理的理由が見当たらない。
以上によれば、Aは、本件遺言時に遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力たる意思能力を備えておらず、遺言能力があったとはいえないから、本件遺言は有効とは認められない。
亡くなった方が遺言書を残していた場合、遺言の方式違背、文言の解釈等が争いとなる場合がありますが、本件は、そもそも、遺言ができる判断能力を有していたのか(「遺言能力」といいます。遺言能力が欠ければ、遺言は無効となります。)が問題となった事案です。
遺言能力の有無は種々の要素によって総合的に判断されます。
本件は、当時の病状から遺言能力が欠けていると推認したうえで、さらに、作成手続の経緯における不審な点、作成の理由が見当たらない点を指摘し、遺言を無効だと判断しました。
高齢化社会の現在、遺言・相続に関する紛争は後を絶たないでしょう。
当事務所では、相談するにあたり紹介者は必要ありません。
どなたでもお気軽にご相談いただく事ができます。
お急ぎの方は、その日の相談 「即日相談制度」 を受け付けております。