Q
新型コロナウイルスの影響もあり、売り上げが激減し、会社を存続するかどうか悩んでいます。会社を閉じる(破産する)か、建て直す(再生する)かは、どのような基準で判断したらよいのでしょうか?
A
再生か破産かの判断基準は一概には言えませんが、一般的には、会社の営業利益が黒字であれば再生を、営業利益が赤字であれば破産を選択するというのがひとつのメルクマールと言われています。
しかし、今回の新型コロナ禍による売り上げ減少は、ある意味外部的要因であり、営業利益自体が赤字だからと言って、一概に破産選択ということにはならないと考えるべきです。従前からの売り上げの推移、コロナ禍による売り上げ減少収束の見通しや運転資金余力等を総合的に判断していくべきでしょう。
Q
会社を建て直す(再生)にはどのような手段があるのでしょうか?
A
大きく分けると、裁判所をとおした法的手続きである民事再生手続き(上場会社であれば会社更生手続きも検討)と、金融機関(債権者)と直接交渉する私的整理(私的再建)手続きがあります。可能であれば私的整理から検討というのが王道ですが、いずれもメリット、デメリットがありますので、詳しくは相談時にお尋ねください。
Q
民事再生と私的整理はどのような基準で手続きを選択するのでしょうか?
A
民事再生の難点として、以下の2点を挙げることができます。まず、民事再生手続きは、裁判所を通して行う法的手続きですので、再生手続きを行っていることは公になります。そのため、会社の信用が毀損される恐れがあります。これに対し、私的整理は、金融債権者以外には知られずに手続きを進めることが可能というメリットがあります。
また、民事再生の場合は、取引債権者と銀行等の金融債権者を平等に扱う必要があり、金融債権だけを民事再生の対象とすることはできません。取引債権者に対する債務は何とか支払っていきたい(そうしないと営業継続が困難)という場合には、私的整理が可能かを検討していくことになります。
Q
民事再生、私的整理、どれくらいの費用が掛かるのでしょうか?
A
民事再生の場合、裁判所に申し立てた時点で、予納金と呼ばれる裁判所から指定された金員を収める必要があります。債務額に応じて一応の基準は公開されており、債務額が5000万円以下は200万円、1億円以下は300万円を申立て直後に納めなければなりません(現在のところ、裁判所の予納金の分割には応じていません。)。また、弁護士に依頼される場合には、弁護士費用も別途かかります。
このように、再生を望まれる場合、それなりの資金余力がある段階で手続きを始める必要がありますので注意が必要です。
Q
私的整理(私的再建)はどのように手続きを進めるのでしょうか?
A
私的整理(私的再建)は、債権者である金融機関と直接交渉する手続きですが、支払い猶予(リスケ)だけであればともなく、債務額の減額まで交渉しようとすると、直接交渉では金融機関には中々応じてもらえません。
そこで、中小企業再生支援協議会(全国各都道府県に支部があります。「支援協」と略称することもあります。)という組織を利用して私的整理を進めることが多くあります。最近では、裁判所の特別調停という制度を利用して私的整理をする事例も増えてきています。
Q
私的整理(私的再建)とはM&Aのことでしょうか?
A
私的整理とM&Aは違います。私的整理とは、経営改善計画(再生計画案)を作成し、支払い猶予を得たり、従前の会社が一定額を金融債権者に支払い、残りを免除してもらうことにより事業の再生を図る手続きですので、事業自体を売却するM&Aと同じものではありません。
但し、私的整理の中でも、自主的に事業を再建するのではなく、事業を他に譲渡することにより事業自体の再生をはかる手法もあります。この場合には、実質的には、M&Aと近接することになります。
Q
私的整理を選択し、銀行と債務カット等の交渉をしている事実は、取引債権者には通知する必要があるのでしょうか。取引債権者に知られると取引を停止されてしまいそうです?
A
ありません。
特定の債権者(多くは金融債権者)とのみ債務整理の交渉を行うことができるのが私的整理の特徴の一つですので、取引債権者とは従前の取引を継続しながら債務整理を行うことが可能です。
Q
民事再生とはどのような手続きなのでしょうか?
A
民事再生とは、簡単に説明すると、会社(事業)を再生するための再生計画案(再生債権者への弁済計画案を含む)を債権者に提案し、債権者集会において可決されれば、当該再生計画を実行することにより、計画案記載の弁済以外の債務が免除されるという手続きです。これにより、債務の大半が免除により消滅し(免除率は事案によりますが、95%以上の債務が免除される事例も珍しくありません。)、会社は過大な債務から解放されることになります。
この民事再生手続きによる事業再生の手法として、大きく、①自主再建型と②スポンサー型の2つがあります。自主再建型とは、文字通り、将来的な経営改善計画を作成し、事業計画に基づく再生計画案を作成し、計画案に基づき債務の一部を弁済し、残額を免除してもらうことにより会社の再建を図る手続きです。これに対しスポンサー型とは、自分たちで再建を図るのではなく、
スポンサーとなってくれる企業を募集し、当該スポンサーに事業を譲渡したり、経営権を委譲したりすることにより、事業若しくは会社の再建を図る手続きです。
Q
スポンサーとなってくれる企業はどのようにして募集するのでしょうか?
A
民事再生の場合、民事再生の申立てとともに官報で公告されることになりますので、スポンサー候補者の方から手を挙げてくることも多くあります。また、同業他社にこちらから声を掛けることもあります。
それ以外に、スポンサーを紹介する仲介業者に依頼することもあります。
Q
スポンサー型を選択すると、会社(社名)はなくなってしまうのでしょうか?
A
スポンサー型には事業譲渡型と経営権委譲型があります。事業譲渡型はスポンサー企業に事業と譲渡し、譲渡した会社はその後清算するのが一般ですので、会社は消滅することになります。それに対し、経営権委譲型の場合は、会社の株式を譲渡したり、新たに株主となってもらうことにより経営権(支配権)を委譲する手法ですので、従前の会社はそのまま存続することになります。
Q
民事再生手続きをすると、会社の経営者が交代することになるのでしょうか?
A
民事再生手続きによって、従前の経営者が経営から離れなければならないということはありません(それに対し、会社更生手続きでは管財人に経営権が移ります。)。手続き遂行中も、従前の経営者が会社を経営し再生を図っていくことになります。
但し、上記のとおり、スポンサー型を選択した場合は、スポンサーが新たに経営することになりますので、その場合は経営者が交代することになります。
Q
民事再生手続きを行っている間、会社の営業はどうなるのでしょうか?
A
会社の営業は継続することになります。取引債権者に対し取引の継続をお願いし、従業員に対しても給与を支給する必要があります。
Q
その間の資金繰りはどうなるのでしょうか?
A
資金繰りについては、手続きとは別の問題ですので、自己責任となります。法律上何らかの手当てがあるわけではありません。よって、再生計画案を実行し再生手続きが完了するまで資金ショートを起こさないよう万全の注意を図っていくことになります(当事務所では、資金繰りについても受任内容に含まれています。)。万が一、手続き中に資金ショートを起こしてしまった場合には、民事再生手続き自体が終結してしまうことになります。
Q
民事再生手続き中、資金繰りが苦しくなったら、借り入れ等をしてよいのでしょうか?
A
民事再生の手続き中、借り入れをすることは法律上禁じられていません(但し、監督委員の同意が必要です。)。実際にも、DIPファイナンスといって、借り入れが行われることも珍しくありません。当事務所がこれまで関与した民事再生案件では、いずれもこのファイナンスを行っております。
Q
民事再生による再生は、どのようにして終わるのでしょうか?
A
再生計画案の実行が終了すると、裁判所により終結決定がなされ民事再生手続きは終了することになります。逆に、再生計画案の実行が履行不能と判断された場合には、裁判所により廃止決定がなされ、破産手続きに移行することになります。
Q
会社の再建を行う場合、保証債務を負っている代表者の債務整理はどのようになるのでしょうか?
A
会社の代表者は通常会社債務の連帯保証人になっていることがほとんどですので、会社の私的整理又は民事再生を行う場合、同時に代表者の債務整理を行う必要があります。手法としては、代表者も民事再生を行ったり、破産手続きを行ったりしますが、近時は、経営者保証ガイドラインを利用して債務整理をすることも増えてきています。
Q
経営者保証ガイドラインとはなんですか?
A
会社が債務整理をする場合、経営者が破産をせざるを得ない従前の弊害を除去することによって、早期の事業再生や清算を促進するために設けられたルールのことをいいます。
主たる債務者である会社が債務整理手続を行う際にも、経営者は、経営者保証ガイドラインを利用することによって、破産をしないで一定の財産を維持したまま保証債務を整理することが可能となる場合があります。