親族が亡くなり、不動産を相続することになった時、
「登記って何から始めればいいの?」と戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺産相続で不動産を相続した場合、相続登記を行わなければ名義を変更することはできません。
相続登記には、被相続人の死亡を証明する書類や相続人を証明する書類など、
さまざまな書類が必要です。
また、書類の取得方法や手続きの流れを理解しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
この記事では、不動産相続登記に必要な書類とその取得方法をわかりやすく解説します。
不動産相続登記とは?義務化の背景
不動産相続登記とは、亡くなった方が所有していた土地や建物の名義を相続人に変更する手続きです。
以前は任意でしたが、法改正により令和6年(2024年)4月1日から法律上の義務となり、相続人にとって避けて通れない重要な手続となりました。
手続きには一定の時間がかかりますので、早めの準備が大切です。
令和6年からの義務化と申請期限・罰則について
令和6年4月1日から施行された改正不動産登記法により、
相続登記は新しく法律上の義務となりました。
この義務化は、令和6年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
そのため、過去の相続で登記していない不動産がある場合も対象となる点にご注意ください。
申請期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、
当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」と定められています。
簡単に言えば、相続が発生し、
ご自身が不動産を取得することを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。
この期限を過ぎ、登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、正当な理由がある場合は過料の対象外となることもあるでしょう。
正当な理由としては、相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間を要する場合や、
遺言の有効性について争いがある場合、相続人自身に重病などの事情がある場合などです。
注意すべき点として、
令和6年4月1日より前に発生した相続については、施行日から3年以内(令和9年3月31日まで)
または通常の期限のいずれか遅い日までに申請すれば問題ありません。
例えば、平成30年に相続が発生していた場合でも、
令和9年3月31日までに申請すれば期限内となります。
義務化された背景とは?
この制度が変更された背景には、所有者不明の土地問題があります。
相続が発生しても登記が放置されることで、
誰が所有者なのか分からない不動産が全国で約410万ヘクタールも存在し、社会問題化していました。
そこで国は新たに、相続登記を義務化することで、不動産の所有関係を明確に管理し、
土地の有効活用を促進することを目的としています。
義務化の対象となるのは所有権の登記名義人について相続が開始された場合であり、
法定相続人だけでなく、遺言により不動産を取得した受遺者も義務の対象です。
共有不動産の場合は、各共有者がそれぞれ義務を負うことになるため、
共有者間での連携も重要でしょう。
手続きの流れと3つのステップ
必要な書類をスムーズに揃えるためには、準備の段階で何をすべきかを把握しておくことが重要です。
書類の不足や間違いは、手続きの遅れや再提出の原因になりかねません。
そこで次のとおり、書類を効率よく準備するための3つのステップを紹介します。
ステップ1:相続人の確定と基本の書類
まず最初に行うべきは、相続人を正確に把握することです。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、誰が法定相続人なのかを確定させます。
この作業は意外に時間がかかることが多く、被相続人が本籍地を何度も移している場合は、
複数の市区町村から戸籍を取り寄せる必要があります。
同時に、相続人全員の現在戸籍謄本も取得しましょう。
相続人の中に既に亡くなっている方がいる場合(代襲相続)は、
その方の死亡の記載がある戸籍謄本と、代襲相続人の戸籍謄本も必要となります。
住民票の除票(被相続人)と住民票(相続人)の取得も忘れないようにしましょう。
これらの書類により、登記簿上の住所と実際の住所の繋がりを証明できます。
ステップ2:遺産分割と合意書類の準備
相続人が複数いる場合、誰がどの不動産を取得するかを決める遺産分割協議が必要です。
協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印してください。
この際に使用する印鑑は実印でなければなりません。
そのため、全員の印鑑登録証明書も併せて取得しておきましょう。
遺言書がある場合は、遺言書の種類によって必要な手続きが異なります。
自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要です。
一方、法務局で保管されている自筆証書遺言や公正証書遺言の場合は検認不要です。
法定相続分で登記する場合は遺産分割協議書は不要ですが、
後々の不動産活用や売却をを考えると、特定の相続人に所有権を集約する事例が多いです。
ステップ3:不動産関連書類の確認と申請の準備
最後に、対象となる不動産の詳細を確認します。
登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、現在の登記内容を確認しておきましょう。
特に、被相続人の住所が登記簿上の住所と異なる場合は、
住所の繋がりを証明する書類(住民票の除票、戸籍の附票など)が追加で必要になる場合があります。
固定資産評価証明書も重要な書類の一つといえるでしょう。
これは登録免許税の計算に必要で、不動産所在地の市区町村から取得します。
登録免許税は固定資産評価額の0.4%ですが、免税措置の対象となる場合もあります。
これらの準備が整ったら、管轄の法務局に申請します。
書類に不備があると補正が必要となり、手続きが遅れる可能性があるため、
提出前にはチェックすることが大切です。
不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、
確実かつスムーズに手続きをすることができます。
相続登記に必ず必要な書類と集め方
相続登記を行う際には、書類の準備が欠かせません。
必要な書類が揃っていないと、手続きが進まなかったり、再提出を求められることがあります。
ここでは、相続登記に必ず必要な9つの書類をまとめます。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を確認することで、相続関係を明確にします。 - 被相続人の住民票の除票
最後の住所地を確認するために必要です。 - 相続人全員の戸籍謄本
相続人であることを証明するために必要です。 - 相続人全員の住民票
登記申請書に記載する住所を確認するために使います。 - 遺産分割協議書(または遺言書)
相続財産の分け方を決めた書類。遺言書がある場合は優先されます。 - 固定資産税評価証明書
登記に必要な土地や建物の評価額を確認するために使います。 - 登記申請書
法務局に提出する正式な書類で、必要事項を記入して提出します。 - 印鑑証明書(相続人全員分)
遺産分割協議書や登記申請書に押印した印鑑を証明するための書類です。 - 委任状(代理人が手続きを行う場合)
弁護士や司法書士など、代理人に手続きを任せる場合に必要です。
これらの書類を事前に整理しておくことで、相続登記をスムーズに進めることができます。
必要に応じて、専門家に相談しながら準備することをおすすめします。
登記申請書|書き方も解説
登記申請書は、相続登記の中心となる重要な書類で、
法務局に正式に名義変更を申請するための文書です。
この書類には、以下の情報を正確に記載する必要があります。
- 相続する不動産の詳細
- 相続人の情報
- 相続の原因と日付
申請書には厳格な記載ルールがあり、誤記や漏れがあると受理されません。
記載のポイント
- 登記の目的欄:「所有権移転」と記入
- 原因欄:被相続人の死亡年月日と「相続」と記入
- 相続人欄:新しい所有者となる相続人の住所・氏名を正確に記入し、実印を押印
不動産の表示
不動産の情報は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている内容をそのまま転記します。
- 土地の場合:「所在」「地番」「地目」「地積」など
- 建物の場合:「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」など
※略字や誤字は認められないため、一字一句正確に写すことが重要です。
登録免許税
- 固定資産税評価額 × 0.4%(1000分の4)が基本税額
- 計算結果が1000円未満の場合は1000円
- 収入印紙で納付し、申請書に貼付して消印
申請書のサンプルは、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
手書きでもパソコンでも作成可能ですが、修正液の使用は認められないため、
清書は慎重に行いましょう。
戸籍謄本・住民票・印鑑証明書の取得方法と注意点
相続登記では、被相続人と相続人の身分関係を証明するために、
複数の書類が必要です。特に戸籍謄本は重要な資料となります。
戸籍謄本の取得
被相続人については、
出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)を揃える必要があります。
本籍地の市区町村役場でのみ取得可能ですが、
被相続人が転籍を繰り返している場合は、複数の自治体から請求する必要があります。
効率的に進めるためには、死亡時の最後の本籍地から遡って請求する方法が良いでしょう。
各戸籍には前の本籍地が記載されているため、順番に辿ることができます。
多くの自治体で郵送請求に対応しており、遠方の戸籍も取得可能です。
郵送請求の際には以下を同封します。
- 請求書
- 手数料分の定額小為替
- 返信用封筒
- 本人確認書類のコピー
郵送による請求では、手続きに1週間程度かかることがあるため、余裕を持って進めましょう。
住民票の取得
被相続人の最後の住所地と、相続人の現住所地から取得します。
被相続人の住民票(除票)は、登記簿上の住所と最後の住所を繋ぐ役割があり、
住所変更の履歴が分かる形で取得することが望ましいです。
印鑑証明書の取得
相続人全員分が必要です。
遺産分割協議書に押印した実印が本物であることを証明します。
有効期限は特に定められていませんが、一般的には3ヶ月以内のものを使用します。
マイナンバーカードを持っていれば、コンビニでも取得可能です。
平日に役所に行けない方には便利です。
相続関係説明図・遺産分割協議書の作り方
相続関係説明図は、被相続人と相続人の関係を視覚的に示した図表で、
複雑な相続関係を整理し、法務局の審査をスムーズに進めるために重要な書類です。
この図を作成することで、戸籍謄本などの原本を法務局で還付してもらうことができ、
他の手続きでも活用できるでしょう。
相続関係説明図の作成
目的
- 被相続人と相続人の関係を視覚的に示す家系図
- 複雑な相続関係を整理し、法務局での審査をスムーズに進める
- 戸籍謄本などの原本を法務局で還付してもらう際や、同様に他の手続きでも活用可能
作成手順
- 被相続人を中心に配置
- 配偶者、子、父母、兄弟姉妹の順に線で結ぶ
各人の情報を明記
・氏名、生年月日、死亡年月日(該当者のみ)、続柄
・相続人は住所も記載 - 同順位の相続人は同じ高さに配置
- 相続放棄をした人がいる場合はその旨も記載
遺産分割協議書の作成
目的
相続人全員が遺産の分け方に合意したことを証明する書類
作成手順
- 冒頭に被相続人の情報を明記
氏名、最後の住所、死亡年月日 - 相続人全員が協議に参加したことを宣言
- 不動産の記載
登記事項証明書の内容を転記
「上記不動産を○○が相続する」と具体的に記載 - その他財産の記載
預貯金などは金融機関名・支店名・口座番号まで明確に
将来発見される財産についての取り決めも記載するとトラブル防止 - 署名・押印
相続人全員が署名・実印押印することが必須
一人でも欠けると無効になるため、事前に全員の合意を確認 - 保管・提出
相続人の人数分作成し、それぞれが原本を保管
印鑑証明書も全員分添付し、実印と一致を確認してから提出
固定資産税納税通知書・登録免許税・本人確認書類
固定資産税納税通知書は、相続する不動産の評価額を確認するための重要な書類で、
登録免許税の計算根拠となります。
この通知書は毎年4月から5月頃に不動産の所有者(被相続人)宛に市区町村から送付されるもので、
課税明細書部分に記載された「固定資産税評価額」を使用します。
通知書が見つからない場合や紛失した場合は、市区町村の固定資産税担当課で
「固定資産評価証明書」または「固定資産課税台帳記載事項証明書」を取得できます。
これらの証明書には評価額が記載されており、納税通知書の代替書類として使用可能です。
相続人であることを証明できれば、被相続人名義の固定資産に関する証明書も取得できます。
登録免許税は相続登記の際に国に納める税金で、
固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)が基本的な税率です。
ただし、令和7年3月31日までは土地の相続登記については軽減措置があり、
税率が0.15%となっています。計算結果は100円未満切り捨てとし、
1000円未満の場合は1000円となります。
税額の計算例として、評価額3000万円の土地と建物を相続する場合、
通常は12万円(3000万円×0.4%)となりますが、
土地の軽減措置適用期間中は建物のみに0.4%の割合を適用します。
収入印紙で納付し、申請書に貼付して申請者が消印を押しましょう。
本人確認書類については、
申請者(相続人)の運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付き身分証明書が
必要です。代理人が申請する場合は、委任状と代理人の本人確認書類も必要になります。
ケース別|追加で必要となる書類
相続登記では基本的な戸籍謄本や住民票に加えて、相続の状況に応じて追加の書類が必要です。
ここでは代表的なケース別に、どのような書類が必要になるのか解説します。
遺言書がある場合・法定相続の場合の違い
遺言書がある相続と法定相続では、必要書類が大きく異なります。
まず遺言書による相続の場合、最も重要な書類は「遺言書」そのものです。
自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要で、検認済証明書の添付が求められます。
一方、公正証書遺言の場合は検認が不要ですが、
公証役場から取得した正本または謄本が必要になります。
遺言書がある場合の相続の特徴は、遺産分割協議書が不要になることです。
遺言書で相続財産の分け方が明確に指定されているため、相
続人全員の合意を示す書類は必要ありません。
その代わり、遺言書の内容が有効であることを証明する書類一式が重要になります。
具体的には、遺言者(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の現在戸籍謄本、
不動産を取得する相続人の住民票が基本です。
法定相続の場合は、まず相続人全員で作成する「遺産分割協議書」が中心的な書類です。
この協議書には相続人全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が必要です。
印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものでなければならないため、タイミングにも注意が必要でしょう。
また法定相続では、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本類を集める必要があります。
これは相続人が誰なのかを確定するためで、
場合によっては複数の市区町村から戸籍を取り寄せることになるでしょう。
特に被相続人が転籍を繰り返している場合は、かなりの手間と時間がかかることも珍しくありません。
さらに、相続人全員の現在戸籍謄本と、不動産を取得する相続人の住民票も必要になります。
公正証書遺言を作成するなど、生前から対策をすることで、相続をスムーズに行うことができます。
相続でわからないことがある方は、お気軽にご相談ください。
調停・審判・法人が絡むケースの必要書類
話し合いがまとまらず、家庭裁判所で調停や審判によって相続関係が決まった場合や、
法人が相続人に含まれる場合は、通常の相続登記とは異なる特別な書類が必要です。
特に法人では事業承継を含む場合もあり、早めに対策をしましょう。
調停が成立した場合
- 必要書類:「調停調書」の謄本
- 特徴
遺産分割協議書の代わりとして使用可能
家庭裁判所書記官の証明印が押印されているため効力が強い
審判による場合
- 必要書類
「審判書」の謄本
確定証明書 - 特徴
審判は裁判官が決定を下すため、確定証明書で決定が確定していることを証明する必要がある
これらの書類は家庭裁判所で発行可能
法人が相続人に含まれる場合
- 必要書類
法人の「履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)」:発行から3ヶ月以内のもの
未成年者が関係する場合
- 特別代理人の選任が必要になることが多い
- 家庭裁判所の審判書が追加で必要
これらの特殊なケースでは、一般的な相続登記よりもはるかに複雑な手続きとなります。
書類の準備だけでも数ヶ月かかることもあり、
専門知識なしに進めるのは非常に難しいことが予想されます。
ケースに応じて、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
安心して手続きを任せることができます。
戸籍が見つからない・相続人が不明・海外/外国籍の場合
戸籍謄本が見つからないケースでは、まず本籍地の特定から始める必要があるでしょう。
亡くなった方の住民票の除票や戸籍の附票を取得することで、本籍地の履歴を辿ることが可能です。
ただし、保存期間の関係で古い記録が廃棄されている場合もあります。
その際は「戸籍等不存在証明書」を市区町村で発行してもらい、入
手可能な範囲での戸籍収集を進めてください。
相続人が不明な場合は、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を収集し、
法定相続人を確定させる作業が必要になります。
兄弟姉妹が相続人となるケースでは、被相続人の両親の戸籍まで遡って調査することになるでしょう。
この過程で、知らなかった異父母兄弟や養子縁組の事実が判明することもあります。
相続人が判明したものの連絡が取れない場合は、住民票や戸籍の附票で現住所を調べ、
直接連絡を試みることになるでしょう。
海外在住の相続人がいる場合は、日本の戸籍制度とは異なる手続きが必要になります。
海外在住の日本人であれば、
在外日本領事館で印鑑証明書に代わる「署名証明書」を取得してください。
一方、外国籍の相続人の場合は、
その国の公的機関が発行する証明書類(出生証明書、婚姻証明書など)に
「アポスティーユ」という国際的な証明を付け、
さらに日本語翻訳文を添付する必要がある点にご留意ください。
これらの複雑な手続きは、一般の方が独力で進めるには相当な時間と労力を要します。
特に期限のある相続税申告がある場合は、早めに司法書士などの専門家に相談することで、
効率的で確実な手続きを進めることができます。
専門家であれば、海外の証明書取得の具体的な方法や、複雑な戸籍関係の調査についても、
豊富な経験に基づいたサポートを提供できるため、安心して手続きを任せることができるでしょう。
相続登記はどこに申請する?登記手続きの申請方法
相続登記は、相続する不動産の所在地を管轄する法務局に申請する必要があります。
例えば、東京都世田谷区にある不動産であれば世田谷区を管轄する法務局、
大阪市内の不動産であれば大阪法務局の該当支局といった具合です。
管轄法務局は、法務省のホームページで住所から検索できますので、
申請前に必ず確認しておきましょう。
なお、相続人の住所地ではなく、あくまで不動産の所在地が基準となる点にご注意ください。
たとえば、相続人が北海道に住んでいても、相続する不動産が沖縄にある場合は、
沖縄の管轄法務局に申請することになるでしょう。
複数の都道府県に不動産を所有していた場合は、
それぞれの管轄法務局に個別に申請する必要があります。
窓口・郵送・オンライン申請のポイントまとめ
相続登記の申請には、窓口申請・郵送申請・オンライン申請の3つの方法があります。
それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に最も適した方法を選択することが重要です。
窓口申請のメリットとデメリット
窓口申請は、法務局に直接出向いて書類を提出する従来からの方法です。
最大のメリットは、その場で職員から書類の不備や記載方法について指導を受けられる点です。
初めて相続登記を行う方や、複雑な相続関係がある場合には、
窓口での相談を通じて安心して手続きを進められるでしょう。
一方で、法務局の開庁時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までと限られているため、
仕事をしている方には時間調整が困難な場合があります。
また、管轄法務局が遠方にある場合は、交通費や移動時間も考慮する必要があります。
窓口申請を選択する場合は、事前に必要書類を整理し、
記載例を参考に可能な限り書類を完成させてから訪問することをおすすめします。
郵送申請の利便性と注意点
郵送申請は、完成した申請書類を管轄法務局に郵送で提出する方法です。
時間や場所に縛られることなく申請できるため、
平日に法務局へ出向くことが困難な方には非常に便利です。
また、全国どこからでも申請できるため、遠方の不動産を相続する場合にも適しています。
ただし、郵送申請では書類の不備があった場合の修正対応に時間がかかる可能性があります。
法務局から連絡があった場合、電話での確認や追加書類の郵送が必要になることもあります。
郵送申請を選択する際は、記載内容を十分に確認し、
必要書類の漏れがないよう細心の注意を払うようにしましょう。
なお、郵送時は必ず簡易書留以上の方法を使用し、追跡可能な形で送付することが重要です。
オンライン申請システムの活用法
法務省が提供する「申請用総合ソフト」を使用したオンライン申請は、
24時間いつでも申請可能な最も便利な方法です。
システム上で申請書を作成し、電子署名を付与して送信するため、郵送費用もかかりません。
また、申請状況をオンラインで確認できるため、
処理の進捗状況を把握しやすいという利点もあります。
しかし、オンライン申請を利用するためには、
事前にソフトウェアのインストールや電子証明書の取得が必要になります。
住民基本台帳カードやマイナンバーカードに搭載された電子証明書、
または法務局で発行される申請用総合ソフト専用の電子証明書を用意する必要があります。
また、添付書類は原則として別途郵送または窓口持参となるため、
完全にペーパーレスで完結するわけではない点も理解しておきましょう。
どの申請方法を選択するかは、ご自身の状況や経験、利用可能な時間によって決まります。
初めての相続登記で不安が大きい場合は窓口申請、時間的制約がある場合は郵送申請、
手続きに慣れており効率性を重視する場合はオンライン申請がそれぞれ適しています。
まとめ|スムーズに書類を準備するためのチェックリスト
ここまで不動産相続登記の流れと書類について解説してきましたが、
準備段階で書類の不備があると、
法務局での手続きが長引いたり、再度足を運ぶことになったり、
思わぬ時間と労力がかかってしまうことがあります。
必要な書類について、再度確認しておきましょう。
【基本的な書類一覧】
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式(本籍地の市区町村役場で取得)
- 相続人全員の現在戸籍謄本(各自の本籍地で取得、3ヶ月以内のもの)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(最後の住所地で取得)
- 相続する不動産の登記事項証明書(法務局またはオンラインで取得可能)
- 相続する不動産の固定資産評価証明書(市区町村の税務課で取得)
【相続方法に応じた追加書類】
- 遺産分割協議書を作成する場合:相続人全員の印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
- 法定相続分で登記する場合:追加書類は基本的に不要
- 遺言書がある場合:遺言書の原本と検認済証明書(自筆証書の場合)
取得した書類は、原本とコピーを分けて保管しておくことをおすすめします。
法務局への提出時は原本が必要ですが、手続き完了後に原本還付を受けられるよう、
あらかじめコピーも準備しておくと安心です。
また、戸籍謄本の取得は本籍地でしか行えないため、
遠方にお住まいの場合は郵送での取得も検討してみましょう。郵送の場合は往復で1週間程度かかることも多いので、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
書類の準備段階で問題が生じたり、
「この書類で本当に大丈夫だろうか」と不安に感じたりした場合は、
弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをおすすめします。
書類の不備による手続きの遅延を防げるだけでなく、
相続登記以外にも必要な手続きを確認してもらえるため、
総合的にスムーズな相続手続きを進めることができるでしょう。