Xは、保険会社Yとの間で、その所有するダンプカー(本件車両)について、保険者をY、被保険者をXとする車両保険契約を締結していた。
同契約には、偶然な事故によって被保険自動車に生じた損害に対して保険金を支払う旨の約定とともに、故意によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の約定がある。
本件車両を運転していたCは、運転を誤り転倒・損壊させたとして(本件事故)、車両保険等の保険金の支払いを請求したが、Yが、本件事故はXが保険金を不正に取得する目的で故意に発生させたものであるとして、支払を拒絶した。
車両保険金請求においては、保険者(Y)が、被保険者(X)の故意によって生じたことを主張立証すべき責任を負う(最高裁判例)。
本件事故はCがカーブで急転把したことによって発生したとする鑑定書に、一定の信用性が認められる。
また、長期にわたって運転経験を有するCが必要以上にハンドルを急転把したとは考えられないこと、本件事故は大事故であったにも関わらず、Cは何ら傷害を負っていないこと、従業員の過失によって業務上の重大事故が発生した場合に上司が通常講ずるべき措置をとった事実がうかがえないこと、Cは本件事故を発生させながら、処分その他何らの損害ないし不利益を受けることがなかったことの各事実が認められる。
その他の事情(Xに関連する会社において、偶然性に疑義がある事故がこれまでに少なからず発生していたこと等)も併せて考慮すれば、本件車両の走行経路について知識を有するCが、本件車両を横転させても第三者への損害が生じにくい場所である本件事故現場の本件カーブにおいて、必要以上にハンドルを急転把させたことによって、本件車両を横転させて発生させたもの、すなわち故意によって発生した事故であると認めるのが相当である。
車両保険の付された車両が事故によって損傷を受けたとして、保険会社に対して保険金の請求をしたが、保険会社がこれを争うという事案は、しばしばみられます。
事故が故意によって起こされたものかどうかは、①事故の客観的状況等、②請求者等の事故前後の行動等、③請求者の属性・動機等、④保険契約に関する事情等の間接事実の総合考慮となります。
本件は、請求者側の故意を認定した事例として、一つの参考になると思われます。
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