所長の菅田です。今日は、前回で予告した、交通事故裁判の特徴について書きたいと思います。
交通事故裁判の特徴として、第1に挙げられるのは、同種の裁判が非常に多く、損害額等が類型化されていることです。残念なことに、現代社会に於いては、交通事故がまったくなくなることはありません。今日も、明日も、日本中のどこかで、交通事故が発生し、被害者、加害者が新たに生み出されていることは否定し得ない事実です。
それゆえ、保険制度というのが整備され、強制加入の自賠責保険の他、多くの車所有者は、任意保険にも加入しているわけです。このような保険制度が充実している事故類型に於いては、裁判になった場合、加害者に代わって、事実上保険会社が訴訟をするわけですが、保険会社は、あまりどんぶり勘定で賠償請求に応じるわけにはいきません(そんなことをしたら、その保険自体の収支があわなくなってしまい、商品として存続できなくなります)。そこで、同種事案での将来の支払額を想定する(ひいては保険料を決める)ためにも、争うべきところはしっかり争い、話合いによる解決(これを裁判上の「和解」といいます。)で終わらず、最終的に判決までいくケースが相対的に多くなります。
そうすると、争点についての裁判例が積み重なり、しかも、同種事案の裁判例が積み重なってくるようになり、一定の相場のようなもの(例えば、これくらいの受傷具合だとこれくらの賠償額になる)ができてきます。相場ができると、裁判官は、その相場にしたがって判決をすることが多くなるため、裁判をする前から、大凡の結論が見えてくることもあります(勿論、個別の事情で増減はありますが。)。
そしてこれは、慰謝料や休業補償等の賠償金額だけではなく、過失相殺など、いずれがどれくらいの責任を負うかという問題でも同じです。例えば、車同士が衝突して人身損害が発生した場合でも、停車している車の後から衝突した場合は全面的に加害者の責任(加害者の過失割合10といいます。)となり、被害額の全額を請求できるのが通常ですが、十字路で互いが右折、左折しようとして衝突した場合には、被害者にも一定の過失があり、その過失割合に応じて、賠償請求額が減額されてしまうわけです(例えば、被害者にも過失割合が2割ある場合には、請求額は本来の被害額の8割になります。)。これら事故現場の状況や事故の対応、加害者、被害者の属性等、様々な組み合わせにより、加害者・被害者の過失割合が類型化されているわけです。
勿論、類型化されていると言っても、パズルのように簡単に答えが出てくるわけではありません。過失割合一つ取っても、当該事故がどの類型にあたるのか、各類型の判断事由の該当性等、裁判で激しく争われることもあります。後遺症障害の程度(等級)を争う場合には、医学的知識も必要になってきます。
よって、最近、東京の一部大手法律事務所が、交通事故裁判は過払い訴訟と同様、新人弁護士でもできる簡単な裁判だ、などと考え、宣伝活動に力を入れていると聞きますが、個人的には大きな間違いだと思います。手を抜けば簡単にはなりますが、依頼者の利益のために最善を尽くすには、まだまだ高度の専門知識が必要な裁判類型だと思います。
次回は、交通事故訴訟の特徴として最も重要な、保険会社の賠償基準との差異について書きたいと思います。
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