Xは平成15年3月にYの母と婚姻し、平成16年12月、平成8年生まれのYを認知した。その際、Xは、XとYとの間には血縁上の父子関係がないことを知っていた。
その後、XはYの母に対し、離婚を求める訴えを提起するとともに、Yに対しては認知の無効を確認する訴えを提起した。原審はいずれの請求も認めたが、Yは、血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をしたXが、その無効を主張することは許されないということを理由として、上告した。
血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ、認知者が認知をするに至る事情は様々であり、自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当ではない。また、血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知については、利害関係人による無効の主張が認められる以上(民法768条)、認知を受けた子の保護の観点からみても、あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく、具体的な事案に応じてその必要がある場合には、権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である。そして認知者が、当該認知の効力について強い利害関係を有することは明らかであるし、認知者による血縁上の父子関係がないことを理由とする認知の無効の主張が民法785条によって制限されると解することもできない。
そうすると、認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり、自らした認知の無効を主張することができるというべきである。この理は、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異なるところはない。
参照
民法785条
認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。
民法786条
子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。
認知をすることにより親子関係が発生しますが、血縁関係がないにもかかわらずされた認知は無効であると解されています。
もっとも、民法785条と民法786条の規定により、自ら認知をした認知者自身が、血縁関係がないことを理由に、認知無効を主張することはできないのでないかということが本件では問題となりました。
つまり、認知者は認知の取消しができない以上(民法785条)、無効も主張できないのではないか、民法786条の利害関係人には、認知者を含むと解釈することはできないのではないかということです。
本件では、認知者が民法786条の利害関係人に該当すること、また、認知者が認知の無効を主張することは民法785条によって制限されていないことから、認知の無効を認めました。
自らの意思で認知をしたという認知者の意思よりも、血縁関係の有無を重視した判断といえます。
当事務所では、相談するにあたり紹介者は必要ありません。
どなたでもお気軽にご相談いただく事ができます。
お急ぎの方は、その日の相談 「即日相談制度」 を受け付けております。