柔道初心者であった高校1年の生徒(原告、X1)は、柔道部の練習の際に脳震盪を起こし、数日後の大会では自らは出場せず荷物番をしていた。出場選手であるAに練習相手として呼ばれ、技をかけられた際に急性硬膜下血腫で施術を受けたが、意識障害が残り、介護を要する常態となった。本件は、X1、X1の両親(X2)及びX1の妹(X3)が、柔道部の顧問であるKには注意義務違反があったとして、学校(Y)に対して損害賠償請求をした事案である(原審においては請求棄却。)。
控訴審においては、原審とは逆にYの注意義務違反を認め、Xらの請求を認容した。その理由としては、①X1が柔道初心者でありその技量は未熟であったこと②練習相手のAとX1との体格差が著しいこと③試合前の練習では全力で技をかけることが多いこと④X1とAが組み手をした場合、受け身をすることが難しいこと等から、本件練習によりX1が何等かの傷害を負う危険性が高いことは、Kにとって予見可能であったことが挙げられている。なお、X1が脳CT検査の結果に異常がなかった旨をKに報告していること、大会前の合宿中に嘔吐したこと等をKに報告しなかったことなどから、X1に過失があったものと認め、1割の過失相殺を行っている。
部活中の事故により学生が障害を負うに至った事例については、これまでにも裁判例が数多く存在するところである。
担当教諭の過失を認めた例としては、神戸地判平成21年10月27日(部活動の練習後に被害者に対し加害者らが暴行を加えて障害を負わせた事案)、東京高判平成21年12月17日(柔道部の練習中に頭部を打った生徒がその後植物状態となった事案)があり、否定した例としては、仙台高判昭和59年9月28日(柔道部の部活動練習中にコーチから技を掛けられた直後に障害が生じた事案において、コーチが技をかけたことと障害との間の因果関係を否定した。)、東京地判平成16年9月27日(柔道部の練習中に生徒が障害を負った事案において、顧問教諭が当該生徒を練習に参加させたことには指導上の過失があったとはいえないとした事案。)がある。
本件は、部活動において担当教諭に課せられる注意義務を認め、事実認定や損害額について詳細な検討を行っている事例であるため紹介した。
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