被告人は、平成22年12月から平成23年2月までの間に、3回にわたり、深夜ないし夜間、約1分間から4分程度、被害者が居住する集合住宅の駐車場付近において、被害者が使用する自動車の存否を確認した行為、②平成23年2月から3月までの間、3回にわたり、早朝または深夜、1分間以内から約9分間程度、被害者の居住する集合住宅の被害者方玄関付近の通路において同玄関付近の様子をうかがうなどした行為が、ストーカー規制法2条1項1号の「見張り」にあたるとして起訴された。弁護人は、被告人は、被害者の使用する自動車の存否または被害者の居住継続の有無をごく短時間のうちに確認したに過ぎず、被害者の具体的な動静を、一定時間継続して監視、注視することはしていないから、「見張り」には該当しないと争った。
裁判所は、一般に「見張り」とは、主に視覚等の感覚器官によって対象の動静を観察する行為を言い、ストーカー規制法の「見張り」にもその性質上ある程度の継続的性質が伴うとしつつも、この継続性は、見張り概念に内在する性質であって、特に付加された要件ではないとした上、観察する目的によってはごく短時間でもそれぞれ「見張り」に当たるとして、上記①及び②の行為は「見張り」にあたると判示しました。
「見張り」とは、一般に、一定時間継続して動静を観察することを言うとされており、ストーカー規制法の解説本でも「すくなくても若干の時間的継続を要するとみるべきであろう。」としています。常識的に考えても、「見張り」が継続的性質を有するものであることは異論がありません。「一瞬の行動監視」というのは形容矛盾であり、法律上意味をなさないといわれているところです。
では、どの程度の継続性が認められれば、ストーカー規制法の「見張り」に該当するのか、30分監視していれば「見張り」に該当することは争いがなく、数秒であればあたらないとされるとしても、本件のように、数分間といった限界事例においては、その法律解釈が問題となります。
法律解釈においては、いくつかの手法がありますが、有力な解釈手法として、法の目的や趣旨に即して解釈されるべきであるとされており(これを目的論解釈といいます)、本判決でも、法の趣旨にそって、観察する目的によってはごく短時間でも「見張り」に当たると判断されたものと思われます。結論的には異論がないところであり、今後の実務に影響があるものと思われます。
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