本件では、被告であるYが、遅くとも平成21年1月13日までに自宅にテレビジョン受信機を設置したのにもかかわらず、NHK(以下、「原告」とする。)の受信料を支払わなかったことから、原告が主位的に平成21年2月から平成25年1月までの受信料の支払いを求めた事案である(原審認定の予備的請求は、放送法64条1項が、受信契約締結お意思表示を義務付ける規定であるとの理解に基づく請求であるが、ここでは詳細については省略する。)。
本判決は、①放送法64条1項は、受信者に対し受信契約締結の意思表示を命じるのではなく、受信契約を成立させ、受信者に対して受信料支払い債務を発生させることを目的としていること②仮に、放送法64条1項の義務(契約締結義務)が、契約締結の意思表示をすることを義務づけており、その意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が締結されるものとすると、考え方として迂遠であるし、支払をしている受信者との間で不公平が生じること③放送法64条が①のような規定であると解しても、受信者に特段の不利益はないこと④意思表示を命じる判決の制度は、本件のような事案を想定しているとは言い難いこと、を理由として、原告の主位的請求を認めている。
*放送法64条1項本文
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
NHKの受信料支払いについては、社会的関心が高いものと思われるため、ここで紹介することとしました。類似事案の裁判が、多くの裁判所に係属しているようですので、高裁判決が出たことにより、下級審判決に何等かの影響を与える可能性もあると考えられます。
なお、30年以上も前の事案ではありますが、東京地裁において水道料金の未払いにつき争われた際に、同様の考え方を採用して水道料金の支払いを認めた判決が存在します(東京地裁八王子支部昭和50年12月8日判決)。
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