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元義理の息子との結婚?

2018.06.20
所長ブログ

朝、テレビで法律問題クイズのようなものをやっていて(司会者がクイズを出して、ゲストがこれに答えるという形式。)、元義理の息子だった男性と結婚できるか、という問題が出されました。
 事案は、ある女性が20歳違いの男性と結婚し、数年後に男性が病死したのですが、その後、その男性の息子(いわば義理の息子だった男性)と結婚することはできるか(なお、養子縁組はされていない)、という問題でした。
 ゲストの回答は分かれていましたが、街角アンケートによると、結婚できるという回答がかなり多かったということです。
 普通に考えると、依然は義理の息子だったとはいえ、夫の死亡により義理の息子という関係は解消されているので、養子縁組もなかった以上結婚できそうと考えるのももっともですが、実は民法では、義理の息子という関係が解消された後も、結婚はできないと規定されています(民法735条)。
 しかし、放送では、ゲストの間から、弁護士から法律の回答が示された後も、何で解消された後もできないの?という疑問が出されていました。今はそういう発想の方が多数派なんでしょうね。
 そもそも、なぜ解消後もできないと民法が規定しているかですが、これは社会倫理的に好ましくない、という極めて曖昧というか価値判断的な理由が立法趣旨になっています。民法が制定されたのは明治時代で、家族法も戦後まもなくですので、既に制定から70年が経過しています。その間、道徳観念も当然変化しているわけで、解消された後も結婚できないというのはおかしいというのが社会の通念になれば、そのような規定はおかしいという話になってきます。このような制定時の道徳観念を前提にした規定は、他にもあるのですが、いずれ改正されていく流れなのだと思います。
 このように、法律の規定が世の常識に反するようになった場合、本来であれば、法律を作った国会が改正をするべきなのですが、国会と言うところは動きが鈍いことが多いです。
そこで、現在ある法律の効力を失わせる力を持っているのが最高裁判所です(憲法81条)。最高裁判所が、その法律は憲法に反し無効である、と判示したら最後、その法律の効力は失われてしまい、適用することもできなくなります(国会が速やかに改正の手続きをとることになります。)。その最初の例が、依然刑法に規定があった尊属殺(親などの直系尊属を殺害する罪で、通常の殺人罪よりも法定刑が重くなっていました。)の規定です。最高裁は、子が父親を殺害し、尊属殺で起訴された事案において、尊属殺の規定は憲法違反だとして、この規定の適用を排除し、通常の殺人罪の適用をして被告人を処断しました。端的に言えば、殺害した子に同情すべき事情があり、無期刑を科すのが相当でないという判断だったのですが、存在する法律も無効にできる最高裁判所という機関は極めて大きな権限をもっているということになりますね。
この主権者である国民から選ばれたわけでもない最高裁判所の裁判官が、国民の代表者である国会が作った法律をなぜ無効にできるのか、という問題は、国民主権の原則との関係で、実は憲法学でも中々の難問の一つとなっています。

平成30年6月20日

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