被相続人が平成17年9月30日に死亡し、相続人は、被相続人の子であるXら3人とYの合計4人であった。法定相続分は各自4分の1である。
Yは、遺産分割審判を申立てたところ、委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は、相続人らが各持分4分の1の割合で共有することを内容とする審判がされ、確定した。
Xらは、Yに対し、本件投信受益権及び本件国債の共有物分割を求め、訴訟を起こした。
委託者指図型投資信託に係る信託契約に基づく受益権(投信法2条1項)は、信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権(同法15条2項)等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており、可分給付を目的とする権利でないものが含まれている。このような投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、共同相続された投資信託受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
個人向け国債は、法令上、一定額をもって権利の単位が定められ、1単位未満での権利行使が予定されていないものというべきであり、このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば、共同相続された個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
判例では、預貯金等の可分債権は、(遺産分割を経ずに)法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を取得することとされています。たとえば、1000万円の預金が相続財産だとして、相続人が子供2人だけの場合、500万円については当然に相続するわけです。(もっとも、実務では、共同相続人全員の同意のもと、遺産分割の対象としていることが大半です。金融機関も、遺産分割協議書がないと、預金の引き出しに応じないのが通常です。先程の例ですと、子どもの1人が、500万円の引き出しを求めても、もう一人の子供との遺産分割協議書がないと金融機関は応じません。ただ、法的には上記のとおりですので、裁判等で請求すれば、自己の相続分については引き出しが可能と思われます。)。
本件では、委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債も、預貯金等と同様に、法律上当然に分割されるのかどうかが争点となりました。
下級審の裁判例では判断が分かれていましたが、最高裁は、いずれも可分困難な性質を有することから、相続による当然分割を否定しました。同じ債券であっても、その種類によって扱いが異なるとことを判示したわけです。
この判決により、委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は、遺産分割の対象としなければならないことになったと言えます。
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